「俺以外の男と喋るな」
赤司のお気に入りのゆうこと赤司が二人きりで話しているところをたまたま見かけた。
二人は食堂で仲良く向かい合っていた。
赤司は何か食べる訳でもなく、ゆうこをじっと見つめていた。
ゆうこは赤司の言葉に何か返すわけでもなく、弁当を食べる手を止めないでいる。
俺は近くの椅子に座り、昼食を食べながら二人を観察することにした。
「無理に決まってんじゃんそんなことも分かんねーのかよカス。成績はいいくせに常識は知らないなんて、赤司家も落ちぶれたものだな」
「……言葉遣いが汚いな」
「そこかよ。突然変なこと言う赤司が全面的に悪いんだけど」
「まだわからないのか」
「何が?」
「何が、じゃないんだ」
「意味わかんねぇよ」
赤司が珍しくイライラしている。
当たり前だ、この鈍感女が。
赤司、俯いて拳を強く握りしめて震えてるのだよ…
「君が好きなんだ」
「まあ私も赤司のこと嫌いじゃないよ」
「そ、そうか…」
「はぁ…」
「でもそうじゃないんだ……」
「はぁ?」
赤司、完全敗北である。
赤司は手で顔を覆ってしまった。
かわいそうなのだよ…
ゆうこは赤司の「好き」を友達としての好きだと勘違いしている…
「近所に湯豆腐が滅茶苦茶安い店出来たんだけど放課後行かない?」
「…いいのか?」
「いいけど。湯豆腐好きでしょ?」
「あぁ…」
デートじゃないか!
やったな赤司!
「緑間も誘おうよ」
「は?」
「…は?」
ちょっと待て。
何故そこで俺の名前が出てくるのだよ。
「何故だ」
「私と赤司の共通の友達って言ったら緑間でしょ」
確かに俺はゆうこと仲がいい。
ノートを貸してやったり勉強を教えてやったりすることもある。
だからと言って俺を戦地のような場所に駆り出さないでくれ。
「あいつは湯豆腐が死ぬほど嫌いなんだ」
「知らなかった…じゃあ仕方ないね、諦めよう」
切り替え早いな。
何故か少しショックなのだよ…
待てよ、赤司。
これはデートではないか!
よかったな!
「デートみたいだね」
「え、あ、そ、そうだな」
「まあ私達付き合ってないけどさ」
赤司がこの世の終わりみたいな顔をしている…
本当にかわいそうなのだよ…
「まあ楽しみにしてるわ」
「…あぁ、俺もとても楽しみだ」
赤司、顔がにやけてすごいことになっているぞ!
顔ケア!顔をケアするのだよ!!
「じゃああとでね」
「正門で待っている」
「わかった」
ゆうこは弁当を持って席を離れた。
赤司、今日こそは頑張るのだよ!
赤司はぎろりとこちらを見て近寄ってきた。
「緑間、俺と一緒に告白の言葉を考えてくれ」
「は…?」
そこから俺たちは国語の知識をフル活用して赤司の告白の言葉を考えるはめになった。
何時間も議論を重ねた末、決まった言葉は
「好きだ。付き合ってくれ」
だった。
あれだけ考えた末のこれなのだよ…
兎に角俺も頑張ったのだから、成功してもらわなければ…
頑張るのだよ!赤司!!
(緑間ありがとう。成功したよ)
(よかったな。俺の努力も報われたのだよ)