そいつは人間関係を諦めたような女だった。
愛想なんてもんは母親の腹の中に置いてきたかのように不愛想だった。

「由奈さん、おはようございます」
「ああ、うん」

せめておはようぐらい言えよ。
俺よりも長く生きてるくせにそんなことも出来ねーのかこの女は。

「今日は何限あるんですか?」
「3と4」
「そうなんですね。俺も4限で終わるからご飯でも行きません?」
「ごめん」
「…何か用事でもあるんですか?」
「ないけど。あ、教室ついたから。じゃあね」

人よりも色素の薄い髪がゆらりと俺の視界から消えていった。
せめて理由ぐらい取り繕えよ。

由奈さんは同じサークルに入ってる先輩だ。
初めから不愛想だなとは思っていたが、俺の想像を超える程の不愛想加減だった。
取り繕って関係をうまく進める俺とは正反対の人間なのかもしれない。
由奈さんはサークル内でも人とは最低限の関わりしかしない。
そのくせサトリと一部の女子とは仲良くしている。
何でよりによってサトリなんだ。
高校が同じだと聞いたことはあるが、それだけの理由だとは俺は思えない。
サトリにそれとなく聞いたが思った通り曖昧な返事しか返ってこなかった。
由奈さんはバスケが強く、サークル内の女子の中でもダントツに上手かった。
それにチームメンバーを生かすような連携を必要とするプレーが非常に巧みだった。
人と上手く接することが出来ない分バスケではコミュニケーションが取れるんだな。

今日も由奈さんとの距離は縮まらなかった。
それどころか拒否された。
サトリのお気に入りの女。
絶対に手中に収めてやる。
これは俺の意地だ。




 

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