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「ホントのとこ由奈のことどう思ってるん?」
「…別に何とも思ってねぇよ」

花宮はふと視線を下げた。
これは嘘をついている時の癖だ。

「由奈の隣、居心地いいやろ」
「は?そんな訳ねぇだろ」
「冗談を真に受けられんやん?そういうとこ可愛いやろ」
「そう思ってんのはアンタだけだ」

自分や花宮みたいな性悪にとって、由奈の隣というのは非常に心地いいはずだ。
由奈は素直だ。
そして実直で聡明だ。
こちらの邪魔にならないように、それでいて受け入れてくれる。
現に花宮だって由奈を邪険に扱うようなことはしない。
健気に花宮に接する由奈を大人しく隣においている。
由奈といる時の花宮はどこかリラックスしていて、やはり花宮は自分と似ているんだなと少し笑った。

「あいつに昔何があったんだよ」
「気になるんやな」
「ああ」
「話したってもええけど、知った上で由奈を傷つけるようなことがあればワシが許さんで」
「はっ…余程大切にしてるんだな」

ああそうだ。
由奈のことは大切だ。
でも自分ではもう幸せにすることは出来ない。

「友達やから当たり前やん」

ワシは今うまく笑えてるやろか。




 

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