「今吉〜部活行こ〜」
「おう。ちょい待ち」
「はーい」

由奈は優秀なバスケットボール選手だった。
中学では優勝も経験したらしい。
その実力は一年生ながら飛び抜けたものだった。
普段のぼやっとした感じからは想像つかないほど彼女は聡明だった。
コートの中では力強く美しく。
そういう所が由奈の弟に似ていた。

「今日は外周ある日だ〜やだなあ」
「そう言わんと頑張りぃや」
「部活終わりに今吉がアイス買ってくれるなら頑張ろうかなぁ」
「しゃあないな」
「ホント?やったー!」

無邪気に笑って誰にでも優しく親切に。
それが由奈だった。
いつから仲良くなったのか何て忘れた。
期待の一年生エースだとかなんとかで出会ったような気もする。
まあそんなことはどうでもいいんだ。

「バッシュがすぐ汚れちゃうんだよねぇ」
「よう練習しとる証拠や」
「そうかなぁ」

そう言ってにへらと笑う由奈を見ていると自分のどす黒い何かが中和されるような気がしていた。
可哀想な由奈。
バッシュが汚れとるのは女バスの先輩がわざと汚しとるからや。







 

ALICE+