何か企んでいるように笑ってこっちを見ている名前に俺は一瞬、嫌な予感がした。



「なんだよ気持ち悪りぃ」

「うわー失礼極まりないな」

「うっせー」



明らかに何か隠してそうな笑顔と怪しげなビニール袋。こいつのペースに乗せられたら最後だと警戒しながら言葉を選ぶ。



「中村、今日何の日?」

「はっ…?」



俺の前の椅子に座るといきなり聞いてきた。わざわざ2月20日に聞いてくる。俺の誕生日とでも言って欲しいのか。ニヤつく名前にため息を付き知らねーよと無視することを決定。



「えー知らないの?」

「知らねーよ」

「本当に本当?」

「しつこいぞ名前」


ニヤニヤと笑う名前の頬を軽く引っ張ると痛い痛いと俺の手を掴む。やべぇ可愛いかもと一瞬不謹慎なことを思うが


「今日は、歌舞伎の日なんだと」

「あっそ」



とその発言にやっぱり思った通りだったと一瞬の不謹慎な感情から憎たらしい感情へと変わりもう一度ため息が出る。



「ため息ばっかついて幸せ逃げるよ」

「お前のせいで逃げんだよ」

「さっきから失礼だね本当に」

「ありがとよ」



フイと目を反らせばそれを追うように名前が近付いてくる。



「んだよ…」

「あとなんかあるよね?」

「だから知ねーって」



ふーんとからかうように言うと私は知ってるんだなーと嬉しそうに



「今日さ、中村の誕生日でしょ?」



クスッと笑う名前に最初から知ってんじゃねーかよと心の中で呟く。



「だからなんだよ…」

「なんだよってつれないなー」



ヘラリと笑えば持っていたビニール袋からラッピングされた袋を取り出す。



「プレゼント上げに来たに決まってるじゃん」



と俺の前に差し出したプレゼントと恥ずかしげもない笑顔。



「なんか言うことないの中村?」



としてやったりという表情で礼の言葉さえ求めてくる。そんな態度に俺は今日3度目のため息を付く。




「お前こそ、プレゼントの前に言うことあんだろ?」











おめでとうとありがとう
(先に言うのは君か俺か)

1997