彼女でござる
花のJKでござる
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柔らかな陽射しが眠気を誘う四月。
この春、私と晴臣は高校生になった。

「お嬢様、足元に…」
「とうとう今日から高校生ね。なんだかワクワクするわね……、って。きゃっ」

そう笑う彼女は私たちと同じ中等部からのエスカレーター組の生徒で、万里小路さんは中学一年生の時に付き人の花苗(かなえ)と一緒に京都から転入して来た深窓のお嬢様だ。
私と晴臣の事情を知る数少ない友人でもある彼女に対して愛想笑いでやり過ごし、隣で同じく愛想笑いを浮かべている花苗と二人、こっそり苦笑った。

クラス分けの掲示を見るまでもなくS組だった私たちは、一番前列から入場順に着席して行く。
私たちが通う香坂学園は幼稚舎から大学まで一貫教育の共学校で、京都からの転入生の万里小路さんたちは学生寮で生活しながら通っている。

クラス分けは成績順にA組からE組、それに、特にエリートの生徒が集うS組の6クラスがあり、成績も重要視する我が校はエスカレーター方式とは言えど一定のレベルに達しないと進学出来ないし、一定のレベルより下がると自首退学や他校への編入を強いられたりと、在籍し続けることも大変なのだ。

当然のように三年間の間に辞めたり他校へ移る生徒もかなりいて、ただ、エリートの学生たちが集まるS組は別だった。
エリート故に成績だってトップレベルだし、もっと上の大学に進学するために他校に進学した一部の生徒と入れ違いに仲間入りする生徒もエスカレーター組の生徒が大半だ。
見知った顔ばかりのその環境は、私たちのような事情がある生徒たちにとっては有り難いものだった。

うちの学園は特に元貴族の流れをくむ旧家の生徒が多く、華族制度が廃止されて財閥に、そして大企業の御曹司になった晴臣のような生徒も多く、それと同じくして私や花苗のような生徒も多い。
ボディーガードや付き人のような役柄の生徒と二人一組で通っている生徒も多く、その間柄は見た目でもわかる場合と全くわからない場合の二パターンがあり、万里小路さんたちは前者、私と晴臣は後者ってわけ。

まあ、私と晴臣に関しては、大半の生徒に薄々気付かれていると思う。
望月という苗字は徳川家からの分家筋に多い苗字であるとともに、徳川家に仕えた忍(しのび)に与えられた苗字でもあるから。
旧家のお嬢様やお坊ちゃまならそんなの知ってて当然で、それでもお家の事情ってこともわかってるから、有り難いことに深くは突っ込んで来ないんだよね。

けど中学生の頃に校庭で襲われたことがあって、その時に完全に気付かれたと思う。
それでも表向きは私と晴臣は許婚なのだと公言してるから……、まあ、その話は追い追いと。

そんなこんなで、私、望月晴陽、十五歳。
本日をもって、花の女子高生になりました。


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