鶴丸と三日月にも同じように霊力を流し、三人に本体を返す頃にはもう真夜中。腕時計を見ると日付を越えていた。

今日はもうお開きにしようと言い、彼らが広間に戻っていくのを見届けてから、私も離れへと戻った。



お風呂から上がり、縁側で月明かりを頼りに大太刀の手入れをする。満月だから結構明るい。

真っ黒だけれど月の光を反射させる刃はとても美しく、素人の私でもほぅっと溜め息を吐いてしまうほどだ。



『貴方を造った刀工が、貴方に名を与えてくれたのかはわからないけれど…』



本来の名があるのか無いのか、知らないから呼べない。でも、ぴったりだと思う名を見つけたから、そう呼ばせてほしい。



『…″刻燿(こくよう)″…て、どうでしょう?』



黒曜石という黒くて美しい石から″こくよう″という音をもらい、刃の燿(かがや)きを刻むと書いて″刻燿″。

日差しのように強い光ではなく、月明かりのような儚くも美しい輝き。一目見た時から″かがやく″という字はつけたいと思っていた。
戦場で振るっている時、手に馴染む感覚と共にどこか焔のような清らかな熱さも感じられたから、″輝″よりも″燿″の方が似合うと思ってこの漢字にした。

そして、この本丸の刀剣男士の心の深い闇をその燿きで切り開いてあげてほしい。まだ顕現させてあげられないけれど、あなたは私が初めて戦闘で使った武器でパートナーだから、一緒に頑張ってほしい。



『どうか、力を貸してください。刻燿』



さわさわと夜風が私たちを優しく包み込む。少し温かく感じるのは、刻燿が温めてくれているからだろうか。

「よろしく」と、耳の奥で聞こえたような気がした。



 

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