「暑っちぃーよー。銀さん死ぬー。全然繋がんねぇーよー。なに?なんなのこの仕打ち。あ、天パーも熱加えたらストレートになるよ?って事でこんな事になってんの?あぁ、そう、そーゆー事ね。はいはい分かりましたよ。…ってなるワケねーだろ、バカ野郎ーーー‼」


そう言って電話を投げつける銀ちゃん。この暑さのせいで彼の脳みそもおかしくなったみたい。なぜ、銀ちゃんがこんなにキレているのか理由を話そう。それはこの万事屋になんとクーラーが付いたのです。いやでも、地球防衛なんたらって言うリサイクルショップで買ったらしいんだけど、最初の1時間は良かったが、急に壊れてしまったみたいでコールセンターに怒りの電話をかけ続けているのが只今の現状です。


「でもね、リサイクルショップで買ったんだからもう保証とか切れちゃってるんじゃないの?もう扇風機でよくない?」


リサイクルショップに出されているくらいだからもう年代物なんじゃないかな?って思う。でもお店の人が銀ちゃんなら1万円で売ってあげると言って笑顔で帰って来たのにこの結果。ん?なんか前にもこんな事があった様な…


「いーんだよ、そんなモン。それに返品不可、壊れても文句言わないっつー条件でこれを買ったんだからよ。そうきたらもうコールセンターしかないでしょうが」


「はいはい、そーですか」


こうなると銀ちゃんは私の意見なんて聞かない。つーか聞く気がない。そう分かってるから私はソファで寝そべって雑誌を読みだした。今日は新八君、神楽ちゃん、定春はお妙さんと川に水遊びに行っている。銀ちゃんは「なんで金の匂いがしねーのにクソ暑い中、外に行かねーといけねぇんだよ」と言っていた。どうやら中身は暑さで腐ってしまった模様。あ、元からか。

「オペレーター増やしやがれっ‼」と文句を言いながらかけ続ける銀ちゃんの声を聞きながら無視して私は雑誌に目を通す。しばらくすると「…繋がったー‼」と喜びだした。


「お電話ありがとうございます。只今回線が大変混み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直し下さいませ。」


と、在り来たりなガイダンスが流れ出す。「はいはい待ちまーす」と、やっと繋がった電話に少し機嫌が治った様子の銀ちゃん。これでしばらく待っておけばオペレーターの人が出てくるだろう。私はこれで銀ちゃんのわめく声が聞こえなくなる、と思い「ちょっと外の自販機にジュース買いに行ってくる」と告げて玄関へと向かう。「銀さん、いちごミルクねー」と返事が返って来た。こんな暑い日にあんな甘い物を飲むなんて味覚もやられてる。


「よーし、読みかけのジャンプでも読むか」


受話器が上がった電話口からただただ機械的なガイダンスが流れ続ける。


「只今回線が大変混み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直し下さいませ。


只今回線が大変混み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直し下さいませ。


只今回線が大変混み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直し下さいませ。


只今回線が大変混み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直し下さいませ。


只今回線が大変混み合っております。いい加減諦めて電話を切れよ。マジしつけーよ、お前。暑さにやられて死んじまえ。つー事でご利用ありがとうございました」




…。





「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼」


万事屋に続く階段を登っていると、突然銀ちゃんの悲鳴が聞こえてくる。私は慌てて駆け上がり、玄関の扉を勢いよく開けた。


「銀ちゃん⁉どーしたのっ⁉」


玄関に入ると腰が抜けた様子の銀ちゃんが匍匐前進をしながらやってきた。鼻水やら涙やらでもう某映画に出てくる幽霊の様だ。怖い。


「怖ぇ…怖ぇーよー。超寒気した…超涼しくなったよ…寒さをどうもありがとう…」


私の名前を呼びながら、私にしがみ付く銀ちゃん。何が起こったか分からないけど相当怖い思いをしたらしい。なーんでこんな人と付き合っちゃったんだか。

でも色んな面を私に見せる銀ちゃんを好きなんだろう。

どうやら私の頭も夏の暑さでやられているらしい。




そんなこんなで2017年、夏始まりました。 


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