アイ・アム・ドリーマー







シャワーを浴びて稽古場へと向かう。結局あの髪のカピカピの原因は、ゲロだという事が判明した。さらに昨日あれからどうやって屯所まで帰ってきたのか記憶にない。なんかすごい事やらかしてないといいけど。稽古場に近づくにつれて隊士達の練習する声が聞こえてくる。あれ?もう始まってた?中に入ると今日もかっちょいい土方さんが指導していた。


「土方さん、おはようございます」



土方さんは私の顔を見るなり、ハッとした感じで目をそらした。…怒らない。確実に遅刻している私に、いつもなら「士道不覚悟で切腹だ!」ってギャンギャン怒鳴るくせに怒らない。怒られないなら怒られない方がいいわーい。土方さんに昨日の夢の話教えてあげよーっと。



「土方さん、実はですね…」


「な、なんだよ」


「私、土方さんと」


「お、俺と…?」


「キスする…











夢を見ましたー{emj_ip_0792}」




きゃー恥ずかしい{emj_ip_0792}言っちゃった、言っちゃった{emj_ip_0792}両手で顔を覆い、人差し指と中指の間を広げ土方さんの表情を見る。



「…夢?」


ポカンとするこの土方さんの表情は何だろうか。「そうですよ?イイ夢でしょー。あー、正夢になんないかなー」と返すと、ポカンから無表情に変わった。


「お前昨日俺が迎え行ってからここに帰ってくるまでの事覚えてねぇのか?」



えぇ。全く。だって気付いたら自分の布団で寝てたんだもん。ゲロったのは確実だと思うけど。私が首を縦に振ると、土方さんは呆れた顔をした。今日の土方さん、表情が豊かだなー。



「…バカみてぇ」



私に背中をプイと向け、土方さんはぶつくさ言っている。「あの…土方さん?」背中を軽く叩くと急に振り返り。


「てめぇ死ね」



と、暴言を吐かれた。何なの今日の土方さん。変なのー。ふと土方さんの唇を見ると、私と一緒で小さい傷が出来ている。


「あれ?その傷どうしたんですか?」


私をキッと睨みつけると


「野良猫に噛まれたんだよ{emj_ip_0792}」


と怒鳴られた。な、なんですと{emj_ip_0793}噛まれたですって{emj_ip_0793}


「う、羨ましい{emj_ip_0792}私の土方さんに{emj_ip_0792}その猫、見つけて殺してやるわ{emj_ip_0792}」


私が一人で暴れているのを見て、土方さんは「今日の稽古は終わりだ…」と溜息をついて行ってしまった。どこか具合でも悪いのではなかろうか。挙動不審だ。


「あ、なまえちゃん」


振り向くと山崎がミントンのラケット片手に話しかけてきた。みんな竹刀持って練習してるなかお前は何の練習してんだよ。と、心の中で思った。「今日昼から見廻り担当だからよろしくね」だと。すっかり忘れてた。めんどくさ。



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