アカデミーに入ってから早半年。 前の世界にも学校は当たり前のようにあったけれど、ここまで明確な女子の熾烈争いは初めて目にしました。 学生生活 今日の授業は忍術についての講義と実技。 まあ、内容が違うだけで、毎日そのセットがお決まりなんだけれど。 私は一人席を立ちあがると、教室移動の波に着いて行こうと足を動かした。 けれど、ふと立ち止まってしまう。 なぜなら、教室を出ようとしたドアの先に、数人の女子とピンク頭の女の子が対峙していたから。 ……でられない。 私はぽつんとその場に立ち尽くして、その女の子たちが退いてくれるのを待った。 けれど、どうやら周囲が目に入っていないのか、言葉の言い争いが激化していくばかり。 私の後ろに立ち尽くす他の生徒たちも、やれやれと言った感じで諦めのため息を吐いていた。 「なによこのデコリン!」 「うるさいわね!いのブタ!」 「なにをォー?!サクラのくせして!!」 「やるっての?!」 騒動が騒がしくなってきたためか、廊下側の方からも外野の声がざわざわとし始めていた。 あと3分で授業が始まる。 私は扉に佇む女子たちの背中をきょとりと見遣りながら、仕方なしにそっと手を伸ばした。 ―――瞬間 「オイお前ら。邪魔だ」 「…」 「きゃァァア――――!!サスケくんよ!!」 「通れねェだろうが」 「あ、ご、ごめんねえ?」 「ちょっと、サクラアンタが邪魔なのよ!」 「はぁ?!ふざけんじゃないわよ!それはアンタでしょ?!」 サスケと呼ばれた男の子を、モーゼの十戒の如く通す女子たち。 背後の生徒たちから「おおー」という歓声と拍手が沸き起こっていた。 それを茫然として眺めてしまう。 けれど、そのサスケくんとやらには周囲など関係ないのか。 全く気にした風もなく、彼はただその場を通り過ぎていった。 あ、手、ひっこめよう。 私は中途半端に伸ばしていた手を仕舞うと、自分もそっとその場から抜け出した。 「なあ、お前。あんましゃべんねーけど授業ついてけてんのか?てか理解してんのか?」 「…たぶん」 「たぶんってなぁ。お前のことだろーが」 男女という性別の違いはあれど、あれから何かと話掛けてくれている犬塚さん。 移動教室先で彼は私の隣に腰かけてくれていた。 その膝にはお馴染みの赤丸さん付きで。 赤丸なのに、白い…。 「今日の実技も楽しみだよなー。主にナルトが」 「…ナルト?」 「はぁ?!知らねーとか言わねーだろ?あの黄色頭だよ」 「あ、うん」 「だよなー。さすがにあいつのこと知らねーとか言われたらどうしようかと思ったぜ」 「…」 「アイツ悪目立ちしてるからなー。馬鹿だぜアイツ」 「ほら」と犬塚さんが笑いながら指差す方向には、話題に上がっていた当人。 確か、うずナントかナルトという名前の少年だ。 「ぶはははは!何にアイツ変化してんだ?!馬鹿だろアレ!絶対ェー馬鹿だ!」 お腹を抱えて笑っている犬塚さんの振動が私の机にも伝ってくる。 着いている両手がブルブル震える。 「犬塚キバ!次はお前だ!火影さまに変化してみろ!」 「お!俺の番か!見てろよールカ。俺様の完璧な変化を見せてやるぜ」 「…うん」 ニヤリと口角を上げて、イルカ先生の前へと出て行く犬塚さん。 自信たっぷりに放った言葉通り、彼は変化の術の実技を難なくこなしていた。 そして、わたしも呼ばれた際に席を立ちあがって、言われた通りの術を披露した。 「よーっしルカ!俺たちは祝杯といこーぜ!」 「……祝杯?」 「おお!な?赤丸!」 「ワン!!」 そして、今日も平穏にアカデミーが終わった。 あと半年…。 こんな感じなのかな。 (ただいま) (「……」) (変化の術だけだから大丈夫だよ)