Prologue

辺りは日が沈みかけ、まばゆいばかりの夕陽の光が崩れた建物の跡を照らしつける。廃墟と化した古い街のなか、二人の人影があった。

クスクスと、嫌らしく妖艶な笑い声が響く。

「もう終わり?ホントにつまらないわぁ」

異常なほどに長く青い髪をなびかせながら、その女は言った。その女は空中に浮いており、目の前で膝をつく人物を蔑んだ目で見つめた。その人物は、深くフードを被っており、表情は見てとれないが、息を荒くしていた。

「もう、終わりにしましょうか」

「まだ……、私にはやるべきことがある…………うぐっ!」

言い終わると同時に強い竜巻がその人物を襲う。すると、フードが外れて、金色の長い髪が現れた。

「まぁたそれ?あなたのその言葉、聞きあきたわ……。いい加減諦めてくれないかしら?もう飽き飽きしてるの、わからない?ねぇ……、クローディア」

クローディアと呼ばれた彼女は、手にした錫杖を構える。だが、そのとき既に女は消えようとしていた。

「そろそろ"彼のお方"の復活が近いから、あなたと遊んでる暇はないの。それじゃあ、また頑張って追いかけてきてね?クローディア」

嘲けるような笑いを残し、女はみるみる数えきれないほどの黒い蝶となって、その場から消え失せた。

「くっ……!また逃げられたか、クロゼルクめ……」

残された彼女は、地面に拳を叩きつける。サーッと風の吹き抜ける音だけが聞こえた。

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