It led to fortune-telling
世界の北東に位置する国、トロデーン。その城下町と言われたトラペッタの町には、高名な占い師が居たという。その占い師はここ数年ほど、全く当たらないと言われていたが、数日ほど前からは前のように占いが当たるようになったと言う。そんな占い師ルイネロの元を、とある者が訪ねた。
「ん?客かね」
「ええ、私の名はクローディア。名高い占い師といわれる貴方に、これから私が行くべき場所を占ってもらいたい」
立派な髭を蓄えた威厳のある男が、美しい水晶玉の前に座っていた。訪れた女は、黒いローブをまとっており、これまた深くフードをかぶっていた。フードの脇からこぼれ落ちた金の髪と、隠しきれていないわずかに見える口元、声の高さから、若い女だろうことがわかる。ここはそこまで寒くないというのに、ローブでしっかりと全身を覆っていた。
「ふむ……。ならせめて、お主の顔を見せてはくれぬか?ここまで全身を覆われていては、お主の気が読めぬ」
「…………わかりました」
そう言うと、女はフードを下ろす。中から現れたのは、美しい金の髪を持った若い女だった。年は二十を越えた頃だろうか。
「……すまぬな。それでは、早速……ぬううぅぅ!」
ルイネロは、水晶の上に手を掲げて目を閉じた。水晶玉が鈍い光を放つ。
「むむ……?これはこの前の……、そしてこれは……!?」
ルイネロは、目を見開いて水晶の中を覗きこむ。だが、水晶の光は徐々に失われていった。
「……どうでしょうか?」
クローディアは、顔色一つ変えずに尋ねる。
「ううむ、これ以上はわからぬ。ワシが今見た限りでは、このトラペッタの町の南西に向かい、進んだ先にあるリーザス地方へ行くべきだとみられる。何故か、ワシの元に少し前に訪れた二人の旅人の姿が見えたが……。クローディアといったか。お主は何かを探し求めてるのかね?」
ルイネロは、真剣な表情のままクローディアの方を向く。
「……その通りです。私はそのために旅をしています」
「そうか。……………………ならば、今見えた二人の旅人たちに会うことがあれば、共に旅をしてみたらどうだろうか。彼らもまた、手がかりのないものを探している。何か良い影響を与えあえるやもしれぬ」
ルイネロは考え込んだ後に、そう続けた。
「……その旅人とは?」
その日の夜、クローディアはトラペッタの宿屋に泊まっていた。ルイネロから告げられたもの。それは、己が見た夢と同じものであった。
彼女は、昔から予知夢を見ることが多々あった。たびたび夢の中のことが、現実のものとなるのだ。
「エイトにヤンガス……。それが二人の名。私の旅の助けとなる人物……」
そう言うと、彼女はベッドに横たわる。そしてそのまま、眠りに落ちた。
次の日の朝、クローディアは街を出て南へ向かう。町の外へ出てみると、ずっと先に大きな滝が有るのが見えた。
「リーザス……か」
ボソッと自分に聞こえるだけに呟き、彼女は、深くフードを被りなおして、そのまま道沿いに歩きだした。
広大な世界を巡る旅へと向かって。