05
それから細々とした作戦を詰めてゆき、話が一段落する頃には日も落ちかけた頃合だった。
「いやー、一緒に行動できないって言われた時は、オレの冒険はここで終わってしまった!とか思ったもんだけど、なんかいけそうなんじゃねー?やっぱみんな頼りになるわー」
シュカがんーっと伸びをしながら笑った。もう勝った気でいるシュカをアルバがぺしっと叩きながらたしなめる。
「油断してんじゃねーぞ。ぶっちゃけ、こんだけ作戦詰めても勝率は小指の先ほど上がった程度だぜ?運の要素も絡むし、……なにより、相手が相手だ」
「えええ、小指の先ほどなのー?厳しい戦いだなぁ」
シュカは大袈裟に驚いた声を出したが、そこまで落胆した様子ではない。俺はふと気になって訊ねてみることにした。
「そういえば……皆はこのゲーム、ガチで勝ちを狙ってるのか?商品とか、興味あるの?」
この問いを聞いた4人はきょとんとした表情で顔を見合わせた。返ってきた答えは意外なものだった。
「……いや、俺は別に。ノエについてりゃ将来は安泰だし、特に理事長や学科会長に望むものはねえな」
これはアルバの答え。
「んー?オレもそこまで?勝てれば儲けものくらいかなー。もしかしたら推薦とか貰えちゃったりするかも、くらいの期待はあるけどー」
これはシュカの答え。
「おれも、そこまで……?個人で、開発した機械の試運転の、いい機会かなとは思った、けど……賞品に望むものは、ない、かも」
これはリールの答え。
「僕も現状が幸せだからなあ。これ以上なにか望んだらバチが当たりそうだよ」
これはサーシャの。
「……え、じゃあお前らなんでこんな熱心に作戦会議に参加してたの?」
きょとんとするのは俺の番だった。
4人は声を揃えて答えた。
「「「「なんか……楽しそうかなって」」」」
……いつの間にかすっかり俺の考えに染まってしまいやがって。思わず絶句した俺に、アルバが聞いてくる。
「むしろお前はなんでそんなに熱心に作戦考えてたんだよ」
「なんか……楽しそうかなって」
理由を一言で述べるならこう答えるしかない。俺達は再び互いに顔を見合わせて、笑いあったのであった。
「誰も本気でやってなかったとか受けるー!」
「動機だけシンクロするとか……ふ、えへへ、なにそれえ」
「ふ、ふふ、」
「俺らノエ式行動方針に染まりすぎだろ!」
……ああ、なんか、良いな。
この世界に来た時は、こんな楽しい時間が過ごせるだなんて思ってもみなかった。
俺は4人の友人達と笑いながら、
「……、っ?」
なにか引っかかりを感じていた。
大事なことを忘れていたのを思い出しかけたような、ぴりりと神経に走るような違和感。
「ノエ?」
アルバが不思議そうに俺に声をかけてきた。
「ああいや、何でもないんだ」
そう答えれば、先ほど感じた違和感は幻のように霧散して。
辿ることが出来なくなっていた。
――chapter.04 終
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