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「失礼する」

ガラリと扉を開けたと同時に入ってきたのは噂の椿佐助だ。


「あかん…来てもうた」
「……つ、椿くん…」


バッと顔を思い切り背けてしゃがみこむ。


「なんだみんなして僕の顔をジロジロ見て…」
「ちょ、なにしてんねんあんた!」
「………」
「顔も見れないようだな」
「どんだけ純粋なんだよ!」
「誰か来ているのか?」
「お、おう。ちょいお話しててん」
「そうか。取り込み中だったなら仕方ない。出直して…」
「おーおーおー!ちょい待ちや。椿もちょっと茶でも飲んで行きや」
「は?いや僕はまだ仕事が…」
「ちょっとくらいいいだろほらほら」
「ま、…ヒメコちゃ…」
「ん?君は確か」
「…は、はい…」
「知ってるんか?」
「もちろんだ。F組の名字名前だろう。生徒会として全校生徒の顔と名前くらいは把握している」
「……」
「さすがやな」
「それに、以前悪い男に絡まれていたのを助けた覚えがある。あれから危険な目にあってはいないか?」
「…っ…」


信じられなかった。まさか覚えてくれていたなんて。


「お、おい、どうした?」
「あー…こりゃあかんわ」
「こいつ割と天然なとこあんだよな…」
「鈍感」
「な、なんだなんだ!みんなして!」

ヒメコちゃんの後ろに隠れていたけれど思わず涙が止まらない。

「ほら名前ちゃん泣いてもうてるやん」
「お前なに女の子泣かせてんだよ」
「ええ?!僕が悪いのか?!」
「大方、嬉しさの涙だろうが、女の子泣かしちゃいけませんっ!」
「す、すまない…なんだかよく分からないが…涙を拭いてくれ…」


そっと顔を上げれば、椿くんの顔が近くて。


「…っ、ち、ち、か…、うわぁぁ近いですうう!!」


思わず殴ってしまった。



「ありゃ重症だな」
「せやんな…」


部室に残された4人。


「…一体どういう状況なんだ」
「あ、すまんな椿。あの子も本当は素直でいい子やねん。嫌わんとってな」
「それは承知している。彼女はとても優しい子だ」
「え?」
「お前、そんな知ってんのか?」
「彼女は関わりないと言っていたが」
「確かに直接的な関わりは無いが、僕があの日助けた時も捨て猫に餌をあげていたし、」
「お?」
「その件以前にも、」

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