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「マクギリスくん!その顔どーしたの!」

ドアを開けて早々、目の前の美男子の頬が赤くなっているのを見て、思わず声を上げた。

「ガエリオと、ちょっとな」

「なに、喧嘩でもした?いい歳してやめてよねえ」

とりあえずいつものように部屋に上げて、痛そうだったので冷やすようにタオルに包んだ保冷剤を渡した。自分でもお母さんかよと思うくらい、マクギリスにはどうやら世話を焼いてしまう癖がある。

「せっかく綺麗な顔なのに、台無しよ」

「……綺麗な顔、か」

特に深い意味もなくそう言うと、彼は苦笑した。
そういえばそんなふうに言ったことはなかったかもしれない。無意識ながら、少しだけ恥ずかしくなって目を伏せた。別に好きなわけではないし、恥ずかしくなることでもないのだが、今日の彼はなんだか元気がないので、私まで気落ちしてしまいそう。

「これを渡そうと思ったんだが」

マクギリスが持ってきたのは、いつだったか話に出た、旅行のパンフレット。あの頃はまだ石動と付き合ってすらいなかったので、とんでもないものだと思っていたが、今となってはほんの少しだけ行きたい気持ちもあった。

「……旅行、かあ」

「そうだ。行ってくればいいじゃないか。付き合ってだいぶ経つし、そろそろいいだろう?」

「うーん、考えとく」

私の言葉に微かに目を見開いて、マクギリスは不思議そうな顔をする。素直に喜ばないことへの表情なのか、以前のように拒否されなかったことが意外だったのか。

「石動とは仲良くやっているんだろう?この間も、彼の家に泊まったらしいじゃないか」

「へっ」

どうしてそれを。と思ったが、あのとき一緒に石動の家へ帰ったことも知っているのだから、泊まったということを聞いていても不思議ではない。
その夜のことを思い出して顔が熱くなる。顔が赤くなっていませんように、と願ったが、マクギリスが今度は楽しそうに笑った。

「石動は、どうだった?」

「なにが」

「相性だ」

「はあ?」

「表情から察するに、素敵な時間を過ごしたようだな。口元がにやけている」

「……うるさい。ばか」

端正な顔があまりに愉快に笑うので、むかついてほっぺをつねってやった。もちろん、冷やしている方ではなく、反対側だ。
そんな私に、くつくつと喉で笑うマクギリスを見て、元気そうでなんだか安心した。

「元気が出たよ、助かった」

しばらく間を開けてマクギリスはそう言った。
いつもはそんなこと言わないのに、今日はそんなことを言うから少し心配になる。ガエリオと、何があったのだろう。

「マクギリスくん、」

「……気にしないでくれ。何も無いさ」

再び寂しそうな顔に戻り、マクギリスは私をゆっくりと見た。その瞳はどこか切ない色をしている。

「……ルネは」

落ち着いた声で、低く、ゆっくりと呟く。

「ルネは、俺を男として好きだと思ったことはあるか?」

何を言い出すんだろう、急に。
動揺して、うまく言葉が出てこない。冗談で言っている訳では無いのが、彼の瞳が表している。

「……マクギリスくん、」

わからなかった。今まで考えたこともないのだから。いつも彼がここへ来るのは当たり前だったし、他愛もないことを話すのも当たり前の日常の一部だったのだ。それが急にそんなことを言われても、答え方がわからない。彼の真意は?

「触れたいと言ったら、拒絶するか?」

そんな目を、しないで。





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a love potion