「神威さ、そう言うの良くないと思うんだけど」
「でもほら、嬉しくないの?俺と間接キスできて」
「なら普通にキスすればよくね!?」
「その誘い方、本当に可愛くない」


何が可愛くないだ。人様の弁当を当たり前のように食べやがって。
そもそも間接キスって言ってるけど、全部食べたら間接キスもクソもないでしょう?間接的に食べるものがないんだもの。


「返してよ!私のお昼ご飯」
「返すよ、今から」
「別に吐き出して欲しいわけじゃないからね?」
「お前、俺を馬鹿にしてる?そんな事するわけないでしょ」


ほら、こっちおいでよ。と、あざとく手招きをする神威。本当に可愛いよ、顔だけは。

ため息をひとつ零して彼の座る椅子へ近寄ると、案の定手首を強引に引かれ、彼の上にまたがるような状態になった。
嫌な予感。直感的にそう思ったのも束の間、頭を動かないように手で固定された。


「え、かむっ」
「何ビックリしてるの?チューするんだよ」


美憂が口を開きかけた瞬間、神威は貪るように目の前の彼女に口づけを落とし、半開きのそれに、容赦なく舌をねじ込んだ。


「ん、ふっ…」


うちの神威は、四六時中呑気でいいなといつも思う。別に馬鹿にしてるわけじゃないんだ。
ただ一緒に過ごしている中で、自由気ままでその時思った事をすぐ行動に移すところとか、後先考えてないところとか、子供みたいなところばっかりだなと。でも、気づけば私はそんなところも引っくるめて彼が大好きだと。


「長持ちするね、意外と」
「どんだけアンタに特訓されたと思ってるの」
「言うまでもないって?」
「うん」


やっぱり俺の彼女は可愛くないよ。
いつもそんなこと言って、優しく頭を撫でるなんて本当に矛盾している。

頭のネジがきっと何本か足りて無いと思うな、この人は。


「取り敢えずさ、お昼ご飯は神威のくれるんでしょ?もう無いの、作る材料」
「ああ、じゃあ俺が食べ終わったら一緒に買い物行こうか」
「なんだろうね、プラマイ0だよ」


うん、優しいのか優しく無いのかさっぱりわからない。


「何ぼっとしてるの?そんなに俺の上に乗ってたいわけ?食べれないんだけど」
「あーはいはい。その言い方だとキモいね。邪魔でごめんなさいね」
「食べてる間、ちゃんと隣にいてくれないと困るよ」
「…へんなの」


可愛くないなあ、本当に。
思わず緩んだ口元を手で覆い隠したのは言うまでもない。


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