お腹が痛い、腰が痛い、頭が痛い、眠い。


現在私は、生理による不快症状に悩まされている。




「名前、どうしたの?」


朝のHR後、机に力なく突っ伏していると、友人の心配そうな声が聞こえてきた。




「アレ来ちゃって。今日2日目だからさ。」


ゆっくりと顔を上げ、友人の問いに答えた。


私は生理痛が酷く、1日目と2日目が特に辛い。


1日目であった昨日は、日曜だった為に家でゆっくり休めたのだが。




「それはしんどいね。薬飲んだ?」


「飲んだよ。」


「そっか、無理しないでね。」


「うん、ありがと。」


私を気遣い、自分の席へと戻った友人をぼんやりと見遣る。


すると同時に、隣から物凄い視線を感じた。




しまった、天童くんが隣の席だということを忘れていた。


勘が鋭い天童くんなら、さっきの友人との会話から私が生理だってことが絶対バレているはずだ。


そうなると、また天童くんから執拗に絡まれるに違いない。


悪いけど今日は言い返す気力もないから、そっとして欲しい。


そう願いながら、机に突っ伏した。




「名前〜!1限の生物、配るプリントあるから生物室に取りに来いだって!」


教室前方の入り口から、私に知らせるクラスメイトの声が聞こえてきた。


生物の教科係は普段あまり仕事がないのだが、よりによって不調な日に仕事があるなんて。


しかも教室から距離のある、生物室に取りに行かせるとは。




「あ〜、うん分かった。」


仕方なく引き受けた私は、重い体を引きずるようにして椅子から立ち上がろうとした。


すると、天童くんが席からバッと立ち上がった。




「俺行ってくるよ。」


「えっ、いいよ。私の仕事だし。」


「いいのいいの。名前ちゃん今日具合悪いんでしょ?痛みは変わってあげられないけど、こういうことは俺にもできるから。」


そう言うと、天童くんは教室から出て行った。


助けを断る暇さえ与えずに。









それからというもの、今日の天童くんは優しかった。


いつものようなセクハラ発言はせず、机に突っ伏す私をそっとしておいてくれたり、係の仕事をやってくれたり。


『ロッカーに入ってたから名前ちゃんにあげる』と結構な量のカイロもくれた。


今日一日、天童くんの優しさが身にしみて、ありがたかった。




**




「天童くん、昨日はありがとう。」


翌日の朝、自分の席へと着いた私は、天童くんに感謝の言葉を述べた。


昨日お礼を言おうとしたのだが、天童くんが放課後すぐに部活へと行ってしまって、言えなかったのだ。




「ん?あ、いいよいいよ。もう大丈夫なの?」


「うん、大丈夫。本当にありがとう。」


「‥‥もしかして俺にドキッとしちゃった?」


「‥‥してない。一切全くしてない。」


急にニヤニヤとし始めた天童くんに、仏頂面で返す。




「そんなハッキリ言わなくても!あ〜名前ちゃんはどうやって俺に恩返ししてくれるのカナ〜?」


「いや、恩返しするとか言ってないし。」


勝手に話を進める天童くんに少しうんざりしながら、鞄から教科書を取り出す。


まあ、好きなお菓子とか飲み物ぐらいなら奢ってもいいけど。




「そーだ!名前ちゃんが俺のこと好きになってくれたらいいよ!それが俺への恩返し!」


「‥‥は?!何言ってんの頭大丈夫?!」


馬鹿げたことを言い出した天童くんを見遣ると、上機嫌に『俺は本気で言ってるんだけどナ〜』と言っていた。




ああ、残念ながらいつもの天童くんに戻ってしまったようだ。