「……何ですか、これ」


「何って、見たらわかるやろ。お好み焼きや」


「そうじゃないです、私が言っているのは何故お好み焼きに白米を同時に摂取しているかということです」


「あほか、こんなん関西人として基本やろ。お好み焼きをおかずにして飯食うんや!」






ひよ里が自信満々に胸張って堂々と言い放った発言に蒼乃は不満そうに眉を寄せた。





「生憎ですが、私は関西人じゃないので基本じゃないです。じゃあ聞きますが、関西人の人は皆炭水化物を過剰摂取してらっしゃるんですか?」


「知らんけどそうなんちゃう?」


「……悪いですけど、こんなの私食べれません」


「あぁん!?蒼乃、お前居候の身やっちゅーのに食事に口つける気か!?」


「この食事方法は明らかに悪いじゃないですか」


「お前の普段の食事方法の方があかんっちゅーねん」





はぁ、とワザとらしく溜息を零しながら指摘する蒼乃に対し、ひよ里は咬みつく勢いで反論した。…確かにひよ里に言うとおり、蒼乃の食事方法ほど悪いものはないだろう。





「私はいいんです、研究時だけですから」


「その研究時のときは、林檎だけ齧ってりゃええ言うんか!?しかも二週間ぶっ通しで!」


「面倒なんです、わざわざ台所使うのが」


「そんなんマウスの食事と変わらんっちゅーねん!!」


「……あーも、ひよ里その辺にしとき。こいつに何言うても無駄や」





蒼乃とひよ里とのやり取りを止めようと真子が話に介入する。焼きたてのお好み焼きとご飯の組み合わせが絶妙だと言うのに…などと考えながら。






「真子!今すぐ蒼乃をつまみ出せや!こいつがおると、食事もまともに出来へんやんけ!」


「これがまともな食事…?可哀想なんですね、関西人の方は」


「ああん!?お前喧嘩売っとるやろ!!」


「ひよ里さんの勘違いです……あ、いけない。そろそろ私実験結果が出る頃合いなのでこの辺で」


「…は?お前まだ何も食うてないやんけ」





サッと席から立ち上がる蒼乃を呼び止めるかのように声を掛ける真子。しかし彼女はお構いなしだ。






「結果の方が気になりますので。それでは失礼します」


「蒼乃ちんいないとつまんなーいっ!せっかく喧嘩もヒートアップしてきた!?ってところなのにぃー!ねぇ、拳西?」


「うるせぇ、お前は黙って飯食って寝てろボケ」


「ひどーーいっ!」





ドライ過ぎる蒼乃の対応。そそくさの部屋へ戻って行く彼女の背中を見送った後、真子はハッチに視線を向ける。





「ハッチ、悪いんやけど適当にご飯握っとってくれんか?後であの馬鹿に持ってくさかい」


「わかりマシタ、平子さん」


「…ほんま世話のかかる奴やわ」