就職活動は不要?
「…あのね銀ちゃん、頼みがあるんだけど……」


「頼み?」


「うん。…私、江戸に住もうと思って…だから仕事と住む場所が見つかるまでここに置いてくれないかな…?」


「てゆーかっ!何々、菜子江戸に住むの?」


「江戸には銀ちゃんがいるって聞いたから…知り合いがいた方が心強いかと思って……」



恥ずかしそうに段々と声量を小さくなる菜子に銀ちゃんの胸はきゅーんっと高鳴る。



「…菜子、お前はホント昔から可愛い奴だなぁ!!銀さんついついときめいちゃっただろー」


「え、ちょっと!?」




ぎゅうう…と、ときめきのあまり菜子を抱き締める銀時に不機嫌そうな表情を浮かべるトシと総悟。





「てめぇ…!気安く菜子に触れんじゃねぇ。てめぇの馬鹿がうつるだろうが!!」


「そうでさァ旦那。俺の菜子を汚さないでくだせェ」


「「誰がお前のだぁあ!!」」


「菜子は昔からの仲の銀さんものだって決まってんだよ!残念でしたー」


「…って、私は誰のモノでもないから!」





勝手に話を進めていく三人に頭が痛くなる菜子。どうしてこうもまぁ、キャラの濃い三人が集まったのだろうか。





「そういや菜子、まだ働く場所とかも決めてないんだって?」


「え?うん。ついさっき着いたばっかだしね。明日のうちに全部決まるといいんだけど……」


(私みたいなのでも、茶屋の店とかで雇ってもらえないかな?そのくらいなら出来ると思うし……住む場所も、ここから近いところが………)




菜子がこれからのことについて深く考え始めようとした途端、彼女の思考を止めてしまう一言が放たれた。





「じゃあ俺達のところはどうでさァ?」


「……え…」




総悟の言葉に菜子は唖然としてしまう。総悟のところ…と言うことは即ち…




「真撰組……!?」


(いやいやいや!そんなの駄目でしょ、許されるはずがないでしょ!こんな民間人がいきなり役人になっちゃいましたー!だなんて、いいわけがないって!)




それがどういうことなのか理解すると菜子は慌てて首を振った。こんなことが許されるはずがない。




「馬鹿総悟!てめぇいきなり何言い出しやがる!!」


(あ、けどトシは反対みたい。鬼の副長が駄目だって言うんならこの話はありえないか…!)


「菜子は俺のところに所属決定だ!!お前とは関わらねぇようにしてやる!」


「……って、えぇ!?反対してくれないの!?」





予想外の言葉に思いを口に出してしまう菜子。





「何言ってるんですかィ土方さん?元はと言えば発案したのは俺ですぜィ?つまりは俺のどこに就くのが道理ってもんでしょうよ」


(や、無理だって!無理だって!!真撰組だなんてそんな無理だってば!!)


「おいおいてめぇら、何勝手に話進めてんだよ…」




トシと総悟の中に割り込んで、銀ちゃんが口を開いた。




(!もしかしたら、銀ちゃんは反対してくれるかも……!)


「てめぇらみたいな税金ドロボーなんかのところに菜子を預けられるかっつーの!菜子は万事屋のものだって決まってんだよ!!」


(……へ?今度は万事屋!?)


「てめぇみたいな天然くるくるパーマのとこなんかにいたら天パがうつるだろうが!!」


「おいおい、天パを舐めんなよ?俺の天パ頭よりお前のマヨでセットしたベットリ頭の方が菜子は嫌だろ?」


「ちげぇぇ!!!」


「って、話がまとまってないからー!!」





どうしてこういうことになってしまったのだろうか。もう収拾がつかないところまで話が発展してしまった。




「わ、私の話は後でいいよ。それより真撰組の二人もそろそろ執務に戻らないと駄目なんじゃないの?」


「…チッ、見回りの時間か」


「じゃあ土方さんだけで行って来てくだせィ。俺はここに残るんで」


「てめぇも来るんだよ!!」




ちゃっかり残ろうとした総悟を強引に引っ張り連れて行くトシを見送って……ようやく万屋に静けさが戻ったのだった。

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