真選組局長
菜子が万事屋に来て、一夜が明けた。
「銀ちゃん、それじゃあ私仕事探しに行って来るね?」
「えぇー菜子は俺のお嫁さんで……」
「朝からキツい冗談は止ーめーてっ!それじゃ、行って来ます!」
パタン、と万屋の玄関が音を立て、菜子の姿はなくなった。
「…銀さん、結構本気だったんだけどー。あー独り身は寂しいぃーっ!!」
銀時は一人で菜子にキッパリ断られたことに傷ついていた。
「んー…いいところがなかなかないなぁ…」
一方、菜子はと言うと江戸の街の中をブラブラぶらついていた。
いろんな店の求人募集の貼り紙やらを目にしたが、なかなかいいところがなくて困り果てていた。
「…あ、そういえば……昨日のお礼…トシと総悟にしていない……」
銀ちゃんの住んでいるところまで案内してもらったわけだし、お礼はちゃんとするのが礼儀である。菜子は菓子屋さんへと足を運び、彼らへのお礼の菓子を購入することにした。
「すみません、誰か、真撰組の方はいませんか?」
真撰組屯所の前で菜子は一人立っていた。…先程購入したお菓子の袋を片手に持ちながら。
「あのー…すみません?」
(…中に、入りたいけど…入りにくいよね…こんな男の人ばっかだし…だけどちゃんとお礼はしたい…)
さて、どうしようかとその場でウロウロしていたところ……
『どうしたんですか?そこのお嬢さん』
背後から、男性に声を掛けられた。
「あ、あの…真撰組の関係者の人ですか?」
その声の持ち主はどうやら真撰組の隊服を着ているようだし…真撰組と関わりがありそうだ。
『いかにもそうだが…そちらは…?』
「私、花村菜子と申します。昨日、真撰組の隊員であるトシ…土方さんと沖田さんに世話になったのでお礼の品を……」
『おぉー!君かぁ〜二人が昨日話していた女性は!』
「え…?」
『いや〜昨日二人から君の話は聞いていたんだよ。こんなところじゃ何だから中に入って行ってくれたまえ』
「!?や、いいです!そんな、悪いですので……それに局長さんもいいとは言わないと……」
『その局長がいいって言っているんだから』
「…けど、って…え?局、長…?」
…男性の言葉に、戸惑う菜子。
『あぁ、いかにも私が真撰組局長、近藤勲だよ!はっはっは!!』
(……こんな漫画のようなことが、本当にあるだなんて!)
…と言うわけで、近藤さんに言われて強引に屯所の中に足を踏み入れたのだった。
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