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「ウパー!」
「「うわ!!」」
急に横から上がった鳴き声に驚いて、アッシュの腕からボールがコロンと転がり落ちた。空のモンスターボールはウパーの頭上でバウンドすると同時にまばゆい光を放つ。
あ、と呟く様に声を上げた時には既に遅く、ボールは一度も点滅する事なくただ地面に転がっていた。
「…ちなみにその点滅しない現象はポケモンが全く抵抗しない時に起こるやつな」
こんな時でもグリーンは説明する事を忘れず付け加えた。
アッシュもまた、こいつ遺跡にいたウパーか!またこんな遠いところに何故?など色々思うところはあったが、1連の出来事が理解しきれておらず落ちているボールを呆然と見つめてしまった。
ハッとして慌てて拾い上げたはいいが、どうしたものかと思案する。と言うか完全に誤発であった為アッシュの思考はフリーズしていた。
「い、今のウパーだったよな?なんでマサラにウパーなんか…」
そう呟くグリーンにアッシュはウパーについて説明する。
「いくら出かけるのが好きっていってもここカントーだぜ?」
とはいえ、カントーとジョウトは繋がっているので絶対に有り得ないことでも無い。
まぁ、とりあえず出してみろとグリーンに言われ、アッシュは言う通りボールからウパーを出してみる。
ポンッと軽い音と共に出て来たウパーはやはり見慣れたあのウパーであった。ウパーはウパーで先程こちらを見上げていた態勢のままポカンとこちらを見上げている。
それをアッシュもどうしたらいいのか分からず無言で見つめ返す。一体どうなるのかと、その横でグリーンとレッドも思わず無言で見つめる。
暫しこの間だけ時が止まったかの様に長い無言が続いた後、ウパーはビックリしたとでも言う様に一声鳴いた。
「ウパー!」
「えー……?」
人間に例えるなら「おぉー!」と感嘆詞を漏らしたようなものだろうか。
どうやらウパーの方も完全にミス…というより捕まったとこに気づいていなかったらしい。というかこのウパー幾ら何でものんびりしすぎではなかろうか。普段あんなに反射神経を駆使してイーブイにちょっかいをかけている癖に反射神経どこに置いてきたんだ。
肝心なところで使えないのでは意味無いのではなかろうか。
「っぶは……!!!!」
後ろでグリーンの爆笑を堪える苦しげな声が聞こえる。
振り向くと苦しげに腹を抱えて中腰になっていた。どうやらツボに入ってしまったらしい。そのツボに自身も含まれているとはつゆ知らず、アッシュは大きくため息をはいた。
「こっちも誤射というか誤発というか……。とりあえず嫌なら逃すこと出来るけどどうする?」
グリーンの爆笑が治まった後、アッシュはウパーの傍にしゃがみ込んでウパー自身に問う。
「ウパー…………ウパパ!!」
うーん…?と思案したウパーは暫くした後大丈夫!と元気よく答えた。大丈夫って何だ。どう大丈夫なんだ。
話を聞くに、捕まったこと自体はどうでもいいらしく、とりあえず着いてってみるかという感じらしい。
まさか着いてくるとは思わずアッシュが戸惑っている間にグリーンもウパーの付いてくる雰囲気を感じ取ったらしい。
「まぁまぁ!何だか分からんけどとりあえず2匹目ゲットだな!おめでとう!」
そういえばイーブイに続いて、しかもアッシュにとっては誤発とはいえ初のゲットであった。
それを理解したレッドはグリーンを押しのけてアッシュにボールを突きつける。
「よし、バトルしよう」
「「無理だから!」」
今日1番の大声がマサラに響いたのだった。
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