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11月11日
「ヘイ***!私とポッキーゲームをしよう!」
「冗談は背中の薔薇だけにして」
「まあ待て、損はさせないぞ?」
「実害があるんだけど」
釣り餌のようにポッキーの箱をゆらゆら揺らすメタナイトを見て、私は魚か。と思いつつも口には出さない。何故なら今現在こいつはまさしく釣りのような気分で私に話しかけているからだ。顔を見るまでもなく明らかだ。
……顔、と思う。
「ていうか、仮面つけたままじゃ無理じゃない?」
例えるなら雷に打たれたようだった。
ホワイトを散らした背景を背負って、メタナイトは大袈裟によろよろと地面に手をついて、全身で悲しみを表現しながらポツリと言った。
コイツのこういうところは正直鬱陶しく、面倒。
「オーマイガー……」
「じゃあ、そういうことで」
「***!」
何、と振り返ると、何故か視界が真っ暗闇だった。
視界を覆う何かと、唇に柔らかくて温かな感触がある。
「フッ、ではさらばだ***!」
片手をピッと上げる、気障ったらしいポーズ。
軽やかな足取りで立ち去る背中を、私はただただ見送った。
「ポッキー、関係ないじゃん」
end