君の鼓動と僕の鼓動 - 春風



「やぁ、蘭ちゃん。一緒に学校に行かない?」


沖田先輩と一緒に帰った翌日。私と蘭ちゃんが一緒に登校している途中、沖田先輩が乱入してきた。


「………私は千鶴と一緒にいたいの」
「なら千鶴ちゃんも」
「人の話聞いてる?私は、千鶴と二人で登校したいの」
「別にいいじゃない。ね、千鶴ちゃん?」


ドキン


沖田先輩が私の顔を覗き込んで来た途端、私の心臓が大きく波打ってしまう。
栗色の柔らかい髪の毛がサラッと揺れて、私の大好きな先輩の日溜まりのシャンプーみたいな香りがフワッと漂って来る。


「………よっぽど私に嫌がらせがしたいんだね」
「だから蘭ちゃん、君やっぱり何か勘違いしてるよ?」
「嘘、信じられないもの」


蘭ちゃんは気が付いていないのかな?沖田先輩が蘭ちゃんを見つめる目が、とっても熱の籠ったものなのに。


私は、気付いてしまったの。
沖田先輩の気持ちが、もう私に向くことがないであろうことに。そして、その沖田先輩が想いを寄せている相手が、蘭ちゃんだってことに。

私は、まだ沖田先輩が大好きなのに、でも先輩は蘭ちゃんが好きで。しかもその蘭ちゃんは、恋にはとことん鈍感で、更に私の親友。

本当に、現実は残酷だよね。


第六章 醜い嫉妬

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春風