ホワイトデーだからさ






「おーみーーー」


ヒョコッとキッチンに顔を覗かせると、髪を上に結ってて大好きなガッチリと大きな背中見える。だが、その背中はいつもと違くて小さくなっていた。



「ねぇ、何作るの?」

「うるせー、あっちいってろ」


ピッタリ隣に寄って彼の手元の野菜を切る手を見て思わず笑みが溢れたので彼の顔を覗くといつもよりも眉間に皺を寄せて私に目も向けずに、明らかに悪戦苦闘している。


「男の人がキッチン立ってるのかっこいいよね」

「…………」



あ、満更でもない顔してる


「おら。気が散るからあっちいってろ!」
「えーーー!」


サプライズにしたいんだろうな。
と解っていても、誰よりもキッチンに立たなさそうな顔と性格と体型してるのに花柄エプロン着て真剣な顔をしてる姿を見れば……


「男の人がエプロンプレイしたがる気持ちが分かった気がする」


と言いながら背中から腰あたりに腕を回して抱きしめる。ちゃんとエプロンの内側に腕を通してますよ。

録嗚未ーーーー!と頭を背中にグリグリ擦り寄せながら手を徐々に下に滑らせー



「おい」
「んー?」



頭だけこちらを向いた録嗚未と目が合うと、目だけは一生懸命睨みつけていた。



「いい加減にしろよ。

ここでめちゃめちゃにしながら俺が食うぞ」



「……あ。ごめんなさい」


ちょっとだけそれも良いかなと思ったけど、
きっと止まらなくなっちゃう録嗚未だから手料理を食べれなくなるのは悲しいので素直に謝った。




「ぢゃあ、チューだけね?」

「あ!?お前、まだ言う……」



首に腕を回して引き寄せチュッと音を立てて触れるだけのキスをしてニンマリ笑う。また眉間に皺を寄せた録嗚未の顔が見えたがすぐに彼によって口を塞がれ私の何十倍も濃厚なキスをされた。






ホワイトデーのお返しは
手料理と彼自身だったみたいだ。












「ん?んん???…え、美味しい!!!」

「だろ?」



録嗚未の我慢が功を成してキスの後はすぐに料理を作ってくれた。
それにしても………こんなに料理が似合わない奴が、めちゃめちゃ美味しい…っっ


「凄い。美味しくて驚いた……見た目こんな悪いのに」


そう言って多分焼売だろうと思われる物を箸で摘む。


「黙って食え」

「はーい」






幸せなホワイトデーになった。

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