晩御飯どき




くしゅんッ



夜の北海道は一段と寒くなる。



「晋ちゃんこれ着る?」

隣に立っていた杉元さんが自分の着ている上着を脱ぎ渡してくれた。


「ありがとう。
杉元さんは、優しいなぁ…」



私はそれを着始めると、目の前の温かな焚き火の向う側から何かを感じて杉元さんと同時に目の前を見る

尾形さんがこちらを凝視していた。


「!」
「え、なに尾形。もしかして俺の着たいわけじゃないよね?やめてキモッ」


その言葉をスルーして尾形さんは私を見て目を細めた。


「ぬくぬく〜」
「………………」


私は心の中で笑いながら杉元さんの上着をギュッとわざと抱え込む。と尾形さんはその場に立ち上がり何処かへ行ってしまった。


「何処行く、尾形。ご飯できるぞ」


少し離れた所でアシリパちゃんと、白石(手伝い)が作っていたご飯の掛け声さえも無視して奥に進んて行くのでアシリパちゃんが捕まえに行こうとしていた



「アシリパちゃん、良いよ。私が行ってくるね」



私はそう言って彼がズンズン進んでいった先に足早に進んだ。
















足音が聞こえる方に進むと少しずつ彼の背中が見えてきた。


「おーがたさん?」
「……………」



「ひゃくのすけーさん?」

「………何か用か?」


やっと止まってくれた尾形さんは髪を撫で付け振り返る。と分かりにくいがちょっと不機嫌。


「アシリパちゃんがご飯できたから戻って来いって」


尾形さんは後頭部に手を掛けると明後日の方向を向きそれはまるで聞いてたのか聞いてなかったのか……


「聞いてる?」

「………………」


こンの……ッ



「チッ。ホントは晋に俺のを着せたかったが、まぁいい。抱けば関係ないだろ」


「………俺の心の声だとか抜かすんじゃねーよなぁ?」


ジャキン
尾形さんの愛銃のストッパーが外れ、目の前の男は口角をひくつかせた。


「…ご、ごめん冗談だってばっっ!」




まあいいと言わんばかりにふんっと鼻で笑った尾形さんは銃を元の体勢に戻し私の方に歩みを進めた。


「私は尾形さんの着たかったんだけどなー」

「俺が寒くなるから嫌だ」

「……そうですか」



早く戻ってくれるなら何の為に…と内心思いながら私も尾形さんの後に続こうとしたその時、



「ん。」


私の横を通り過ぎたあたりで私の方を向き目の前に銃を持つ手とは逆側の手を差し出してきた。


「…ん?この手は何スか百之助様」

「手ぐらい繋いでやるよ」



………………そのニヤけた顔がムカつく!!!
でも有難く出された手は両手で握りました。ちゃんとね強めにギュッとしてくれる辺り可愛いところあるよね。





「……それもそうか」


「なにが?」





少し前を進む彼が急に立ち止まり、私の方を振り向く


「抱いて、全て解決」


手を引かれ、頬に添えられた手によって逃れられる事が出来ない。
その言葉と共に見せた悪人顔っていったら、とっても様になっていてキュンてしそびれた。



「……ホント、尾形さんは素直じゃあないよね」


なんか楽しそうだから良いけど、
そう苦笑いしながら呟いた私は、尾形さんのソレによって口を塞がれた。



そのキスは暫く続いて、
杉元さんにめちゃめちゃ怒られた






尾形の嫉妬 writing by 椿









「あ。戻ってきたぞ」

白石が茂みの音を確認して2人が向かった先を見るとソコには、
焚き火とは少しだけ距離をとった場所で尾形を背にどう見たってキスをしてる2人が立っていた

「お」

「おっせーよ……ってぇぇ!!!アシリパさん見ちゃダメ!!!」
「杉元!!見えない!!!」



ちょうど杉元とアシリパには背のなるところだったので、杉元はアシリパの頭を白石に向ける事で回避させた。



「堂々と見せつけやがってなぁークソッ!!!」



あわあわしてる杉元とは別で、
あいつワザと見せつけてやがるな。と白石は冷や汗をながしながら真顔になるのでした。






翌朝、杉元は尾形から晋へ貸したはずの上着を投げつけられた。

「もういらねーから」

「お前に貸してねーよ!!!」





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