アルベド族
あの後、まだユウナが囲まれているのを目撃して、私とアーロンは無事装備を整えることができた。そこへ、ユウナとワッカ、ルールーとキマリんが来た。
「待たせてすみません。出発しましょう」
ティーダは先へ行ってるはずです、とユウナは言った。次はグアドサラムだと言ったルールーに着いて私とアーロンは一向の一番後ろを皆に着いて行く。
「お〜い!」
先頭のワッカの声に前方を見やると、ティーダがいた。誰かと一緒みたい。
「知り合いか?」
ティーダに、ワッカが声をかける。女の子だ。密会?逢引?ってそれは私とアーロンか……。
「どーも!リュックでーす!」
とっても元気な子だった。金髪と、グリーンの瞳が綺麗。そういえば、ユウナも片目グリーンだなぁ。
「ほら、ユウナとルールーには、ルカで話したよな。ビサイドに流れ着く前に俺が世話になった……」
ティーダが言うと、ユウナとルールーは何かを察したような返事の仕方をしてた。私が皆とルカで出会った前の話かなと思った。
「そりゃお前、恩人だろ。会えて良かったなあ」
ワッカは、いい人なのだ。
「まったく、エボンのたまものだな」
ちょっと、エボンの教えに忠実なだけで……。
「……で、リュック?倒れてたみたいだけど、ケガないか?」
「ワッカ、ちょっと待って」
ルールーが突然言った。どうしたのかと、斜め前に居るルールーを見上げる。
「んあ?なんだよ」
「ちょっと……話したいんだけど」
「おお、話せよ」
ユウナも言葉を発した。私は何も把握できない。黙って成り行きを見守っていようとすると、リュックが手を上げた。
「女子だけで話し合いで〜す!男子は待っててください!」
「そうね。そうしましょう」
ルールーの言葉でリュックが私のそばまで来た。私が何も把握できないでいる間に、リュックに背中を押されて連れて行かれてしまった。女子だけで少し離れたところまで移動する。
「ん?ああ……?」
後ろから、ワッカの何が何やらわからない、という風な声が聞こえてきた。
「改めて、私はリュック。ユウナのガードになりたい。私はユウナのお母さんの、兄の娘。つまりユウナとは従妹なの」
さっきは言ってなかった従妹というワードが出て来た。女子だけでと言ったのは、このため……?事情がありそうだと思いつつ、私も自己紹介する。
「私は茉凛。アーロンと縁あって、ユウナの旅に同行させてもらってるの」
「リュック。ルールーは、ビサイドに行ってから私のお姉さんだよ」
「黒魔導士よ」
「よろしくー!」
リュックが明るく言った。
「あのね、ここで本題!」
急に声をひそめた。
「従妹って言ったけど。私、アルベド族なの」
それじゃあ、ユウナのお母さんもアルベド族で、つまりユウナもアルベド族。どうりで……。ワッカが嫌いなアルベド族は、ユウナ自身だったんだ。シパーフの上でユウナが帰って来てワッカがアルベド族を悪く言った時、ルールーとユウナが俯いてたのはそのためだったんだね。だから、女子だけで話し合いたかったんだね。ついでに、リュックのグリーンの瞳を見たときにユウナを連想したのは、従妹で似てるところを感じ取っていたのかもしれない。
「それでね……私の髪色、渦巻いた緑瞳。アルベドの特徴なんだぁ……ガードになってもいいかなぁ……」
そうなんだ!エボンの教えに忠実なワッカ……大丈夫かなぁ。するとルールーが口を開いた。
「ワッカには、アルベドのことは言わないほうがいいわ。ユウナの生まれのことも」
ルールーに私はわかった、と頷いた。でも、と思った。特徴でアルベドだってバレるんじゃないかって心配した。でもルールーとユウナを見る限り、そんな心配は大丈夫そう……?
「それじゃあ私たちは決まりだね。アーロンさんに、相談はしてみるけど」
「ありがとう、3人とも!」
リュックがユウナにお礼を言った。それにしても、すごいなあと思った。アーロン。絶対権だよね。かくいう私も、アーロンが連れて行くと言ってくれたから居られるのだけど。だから、私はユウナが望むなら。ユウナ達の意向に沿うつもりでいる。それはルカの時から決めていたこと。
「話はまとまったわね」
ルールーの言葉で、私達は男子の待っている元へ戻った。
「アーロンさん。リュックを、私のガードにしたいんですけど……」
「ユウナが望むなら」
「私は、ぜひ!」
≪ユウナが望むなら≫アーロンも、私と同じ気持ちだと分かってうれしかった。
「う〜ん……」
ワッカの反応に、私は冷や汗をかいた。リュックがユウナと従妹とは言ってないにしても。リュックがアルベドだとバレたのではと。
「リュックは、いい子だよ。俺も世話になったし」
ティーダ、ナイスフォロー。
「そうだな!ニギヤカになって、いいかもな!」
意外だった。ワッカは、エボンの教えに忠実で、アルベド族が嫌いで。もしかして、アルベド族の特徴を知らないのかな。エボンの教えとは……。ユウナとルールーはそれを分かってて?エボンに不信感を募らせる出来事だった。