ジョゼ街道




「次はジョゼ寺院よ。このジョゼ街道の突き当たり。着けば少し休めるわ」

私とアーロンがジョゼ街道入口に到着すると、まもなくティーダも到着し、ユウナ一行の旅が再開した。

「三人とも、早くー!」

未だ気分が沈んでいた私は、ユウナの意外に元気そうな声に顔を上げた。

「張り切ってんな……」

ボヤくように言うティーダは、元気が無いようだった。

「ユウナがあんなに元気なら、私たちも元気出さなきゃね……」

そしてそばに、キマリんが居た。珍しい。これは声をかけなければ!

「ねっキマリん?」

どうやら私たちが最後尾らしい。

「……?」

私とティーダより少し前へと進み出て、振り向いたキマリんに、私とティーダの視線は必然と彼に集中する。

「辛い時ほど努力して、明るく振る舞う」
「え…!?」

文字通り、あんぐりと口が開く私とティーダ。しゃべったアアアアアア!キマリんが喋ってる。喋ってくれたのは初めてだから!

「今も同じだ。無理をしている」
「ほっといて良いのかよ?」

先に金縛りが解けたのは、まさかのティーダ。ハッ!ほ、ほんとだよ!答えを促すようにキマリんを見る。

「ガードが心配すると、ユウナはもっと無理をする」
「……そうかも」

あのユウナなら。それだけ言うと、私たちに背を向けみんなの後へ続くキマリん。

「………………」
「………………」

私とティーダは顔を見合わせ、にやっと笑い、キマリんを追いかける。

「心配するより、笑顔?」

ティーダの呼びかけに、振り向いたキマリんは、私とティーダの側まで引き返してきた。

「キマリも練習している」
「……!」

キマリんの言葉に、なんだかうれしくなって、キマリんの前まで駆け寄るのはティーダと同時だった。

「見せて?」
「……。いぃ〜」
「…〜っ!!」

かっカワイイ〜〜……っ。対してティーダは真逆で。

「はぁ〜〜……」

ため息をついていた。

「元気になったな」

ジョゼ街道1つ目の宝箱をティーダが嬉々として開けたとき、声をかけてきたアーロン。

「えへへ……アーロンのおかげだよ」
「嘘つけ……キマリのおかげだろう」

あら……拗ねてるの?アーロン。

「そんなことないよ?まあ、ユウナが元気に振る舞ってるのにって、キマリんに悟されたけど……でも、アーロンがあの時来てくれなかったら、私……」

海岸でのシーモアのことを思い出す。じっと私を見つめるアーロンの視線を感じる。伏せられた顔をパッと上げて、満面の笑顔を見せる。

「あの時、来てくれてありがとう!アーロン」

にっこり、笑顔を見せる。ユウナじゃないけど。私も、心配かけたくない。そんな私に、ふ、と笑ったアーロンにえへへ〜と笑いかけ、アーロンの隣でジョゼの街道を歩く。こうして、ずっとアーロンの隣で笑っていたいと、願う。

「しっかし厄介ッスね〜!」

立て続けに立ち塞がるバジリスクに、叫んだのは既に4回も石化され、ユウナのエスナで助け出されたティーダ。

「でもバジリスク2体の時の戦法は確立しつつあるわね。まずキマリの不幸で石化にらみをミスさせる確立を上げ、次に最初に倒すバジリスクAをアーロンさんのパワーブレイクで弱体化させ、バジリスクのターンの直前にワッカのスリプルアタックで眠らせて、あちらが起きて待機中のうちに茉凛とティーダがHP下げる要員、私のラ系で一気にオーバーキルでトドメ。ユウナは回復サポートね』
「うん。これまで同様1バトルに全員チェンジスタイルだから、ガルム、バニップ、スノープリンの時とかは、ティーダにガルム、アーロンさんにバニップ、スノープリンを全員チェンジ要員にしてスノープリンのターンが回ってくるから私がバ系で凌いで……でも厄介なのはバジリスク1体、フンゴオンゴ2体の時だよね」
「一発でし止めないとかふんで反撃してくるフンゴオンゴには、キマリの不幸は使えない」
「…………ていうかさぁ」

テンションの下がった声に、みんな一斉にワッカに注目する。

「成長しまくろうと無駄に同じとこ歩いて進まずバトルしまくるから、そりゃ石化される確立も上がるんだってーの!!ジョゼ寺院直ぐそこなんですけど?!ミヘン街道デジャヴなんですけど!!」
「確かに!ワッカの言う通りッス!!なにジョゼ街道終点周辺をウロウロしてんッスか!!ループか?!ジョゼ街道無限ループッスか!!」

二人の悲痛な叫び。可哀想に。でも反論がある。

「思いだしてよ二人とも。キノコ岩街道終点からミヘン・セッションのイベント続きでほとんどバトルしてないから成長止まってんだよ?スフィア盤ずっと風景変わらないんだよ〜?飽きるじゃん」
「この風景のほうが飽きるんッスけど!!」
「……仕方ないわね」

ルーお姉さまの許可が下りました。ここらでようやく、ティーダ達が言うジョゼ街道ループから抜け出すそうです。

「いっぱい成長できたね!」
「ジョゼ街道だけでスフィア盤全員5個以上成長したものね」
「成長しすぎッス!!」

ツッコミ疲れたのか、普通の音量で話を変えるティーダ。

「……ふぅ。ところでさ、ザナルカンドまでどれくらい?」
「まだまだ、だな」

ティーダの質問に応えたのはワッカ。ようやくいつも通りのテンションに落ち着くパーティ。

「幻光河を下ってグアド族のグアドサラム、その後は雷平原を越えてマカラーニャの寺院……」

丁寧に教えてくれるルー姉。

「ふふ。その前に!ジョゼの寺院へ、お祈りでーす」

ジョゼ寺院へと続く小道へ一番に足を踏み入れたユウナが、振り返って微笑んだ。それを見たティーダは、

「一気にバビュッとザナルカンドへ!……それじゃダメなの?」

この男は。まだ食い下がるか……。

「うん、なるべくたくさんの寺院を巡って、祈り子様にごあいさつしなくちゃ」

笑って受け止めるユウナ。

「それが召喚士の修行だ。究極召喚に耐えられるように、心と体を鍛えるのさ」
「なるほど」
「ふぅ〜ん。大変だなぁユウナ」

顎に手をやるティーダは、ダダをこねていたけど、どうやら納得したらしい。

「みんなが居るからだいじょーぶ」

そう言ってキマリんと寺院へと歩き出したユウナにならって、私はルールーと並んでジョゼ寺院への小道を入って行った。