突然だった。
頭の中が真っ白になるのは仕方ないことだと思う。
私の家に勝手に上がり込んでいた一之瀬くん。しかもリビングでお茶まで飲んでいたのには正直心臓が止まるかと思ったぐらいビックリした。
私にテーブルの向かい側に座るように言ったのでおずおずと座った(私の家なのに)
「名前、FFIって知ってる?」
「ファ イナル ファンタジーの新作か何かですか?」
「はい、ハズレ。次何か間違えるごとにキス一回ね」
「なんで!?」
FFIはフットボールフロンティアインターナショナルの略で、サッカーで世界一を競う大会のことらしい。
「それに一之瀬くんも出場するの?」
「決まったわけじゃないけどそのつもりだよ」
「一之瀬くんサッカー上手いもんね!頑張ってね!」
「ありがとう」とニコニコしていたけど、どうやら話はまだ終わりではないらしく、彼はまだ帰ろうとする気配はない。別に帰ってほしい訳じゃないんだけど。
「アメリカ代表で出場したいと思ってるんだ」
「アメリカ?」
「そう、だから近々アメリカに行く」
「そうなんだ…」
寂しくなっちゃうな、せっかく一緒に戦ってきたのに…でも一之瀬くんが決めたことだから素直に応援してあげようと思う。
「だから名前も準備しておいてね」
「…何の?」
「アメリカに行く準備に決まってるだろ?」
「決まってないと思うよ」
「土門も行っちゃうんだぞ!」
「大丈夫だよ秋ちゃんや雷門の皆もいるし!」
「だめ!」
「だ!?」
だめってなに!全拒否された!
何で、私が行く理由なんてないじゃない?って聞けば一之瀬くんはキョトンとした。
「なんでって、俺が名前のこと1人にして行くわけないからだよ」
今日初めての優しい顔をして答えた一之瀬くんに、思わず目に涙が浮かんでしまった。