赤毛で気さくなマルコくんがニコニコしながら私にお菓子を勧めてくる、それをおどおどしながら受け取っては口に入れる私を見て、マルコくんは何故か楽しそうにしている。
「はい、チョコレート食べる?」
「う、あ、ありがとう」
「こっちのビスケットは?俺これ好きなんだ!」
「いただきま、す」
「あ〜これも旨いんだよ、はいどうぞ」
「あ、はい…」
せっかく貰ったものなんだから食べなきゃいけないよね、モグモグ食べているとマルコくんと目が合った。
そしたら急に顔を近づけてきたからびっくりしてビスケットが喉につっかえそうになった。
「口にチョコレート付いてるよ?」
「え、そ、そうなんだ」
だからって顔近いよー!
慌てティッシュで擦れば、彼は可笑しそうに笑っていた。
「マルコ!名前に近づくな!」
「だって可愛いんだもん」
「だもん、じゃないだろ!可愛いけどさ!名前は俺の!」
フィディオくんが横の座席に戻ってきて、私の隣にいたマルコくんを退かした。
そんなに暴れたら飛行機が墜落するんじゃないかって、私は内心ドキドキしながら2人を眺めていた。
そこに「騒がしいな…」とジャンルカくんがため息をついて、フィディオくんに声をかけた。
「だいたいイタリアを勝手に飛び出してアメリカから帰って来なかった奴はどいつだよ」
「ジャンルカ、それとこれは関係ないだろ!」
「いーや、あるね。名前だってそんなお前に振り回されてたに違いない、お前はちゃんとサッカーしてろよ」
「してたさ!アメリカにいた時だってマークやディランや名前とサッカーしたし、イチノセとドモンのプレイも見た。俺はちゃんと、サッカーしてた」
なんか言い合いが始まってしまい、私はどうしたらいいのか分からなくてギュッと目をつむった。
口喧嘩。
違う、一方的に。
私に言うんだ、いつも
「名前、気にするな?俺たちいつもこんな感じなんだ。ジャンルカが真面目なだけさ」
マルコくんが話しかけてくれてどこかに飛んでいた意識が戻ってきた。
たまに自分に疑問を持つときがあるし、自分が分からないときもある。気のせいかもしれない、けど。
「マルコくん達は、フィディオくんを探しに来たの?」
「正確には連れ戻しに来たんだよ。あいつ選考試合で代表になっていい調子だったんだけど、知らないうちにいなくなってたんだ」
「どうして?」
「さぁね」マルコくんは呆れたように笑ってまだ言い合ってるフィディオくんとジャンルカくんを見た。
「ただ、フィディオを連れ戻しに来て、フィディオの隣に君がいた」
「偶然あそこで出会ったんだよ、あ!そこでちゃんとフィディオくん練習してたんだよ!」
「分かってる。フィディオは君の隣にいたとき、イタリアにいたときとは違って…」
マルコくんは私を見た。
私が首を傾げると、また少し呆れたような顔をしながら笑って「楽しそうに笑ってたんだ」と呟いた。
「そんな訳で、フィディオはまず向こうについたらチームメイトに謝ること!いいな!」
「はいはーい、ジャンルカはうるさいなぁ」
「こら聞いてるのかフィディオ!」
「聞いてまぷー、フィディオさんはお利口ですからねー。それより名前!イタリア着いたらどこ行こうか!」
「聞いてないだろう!」
あはは、ジャンルカくんがご立腹だ。フィディオくんは全く聞いてなくて私の手を握って相変わらずニコニコしている。
マルコくんは「ほら2人とも座席に戻れよ、もう着くよ」と何故か楽しそうだった。そういえば私、イタリアに向かってたんだった…。
無事に飛行機が着陸して外に向かう階段に立つ、いい天気で眩しいかも…。
不意に宙に浮いたかと思ったら、フィディオくんが私を抱き上げてお姫さま抱っこしていた、!
「ちょちょちょ…!」
「ん?ちょうちょはいないよ?」
「じ、じゃなくててて、!」
フィディオくんは分かってるのか意地悪く笑ってギュッと私を抱き締めた。私自分で階段降りられますよフィディオくん!
「イタリアにようこそ名前」