暑い…。夏なんだね…。
汗を拭いながらライオコット島という島に連れてこられて、先に外に出た私は辺りを見回した。
南国の島みたいな、そんな感じで、大きな地球儀みたいなモニュメントにはFFIと書かれていた。
FFI…?あ!ファイナルファンタジー…じゃなくてフットボールフロンティアインターナショナル!そっか、ここがその会場なんだ…。
それにしてもこんなに大きな島を貸しきってしまうなんて凄いな、感心感心。
「名前!」
「ふぎゃっ」
急に後ろから勢いよく抱き締められて少しよろめく。
こんなことをするのはフィディオくんと一之瀬くんぐらいで、さっきまで一緒にいたフィディオくんじゃないとすると…。
「一之瀬くん…?」
「会いたかった…名前」
そんな言葉を言ってもらえるとは思ってなくて、思わず涙が目に溜まってしまった。ごめんなさい、と言ったら体を向かい合わせにさせられて「会えたからいい」と笑ってくれた。涙止まらないじゃんか…。
「カズヤ?」とマークくんが一之瀬くんの後ろからやってきて、涙でぐちゃぐちゃな顔の私と目が会うと優しく笑ってくれた。
「げっ」
私の後ろから声が聞こえて振り向くと、冷や汗をだらだら垂らしたフィディオくんがいた。
「やぁ、イチノセにマーク…!」
「よぉ…イタリアの白い流星」
一之瀬くんがいきなり番長みたいな口調になってびっくりした!すごい真っ黒なオーラが見える!私そんな能力ないのに!
「心配するな名前、俺にも見える」ととても恐ろしいもの見るような目でマークくんは私の肩に手を置いた。
「聞いてくれ、俺じゃない!ジャンルカとマルコが連れてきたんだ!」
「フィディオが俺たちのせいにしてるよジャンルカ!」
「なんだあの真っ黒なオーラは…あれがアメリカの要のイチノセ、!?」
空港から出てきたイタリアチームの方たちも一之瀬くんを見てびっくりしている。無理もない、獲って食ってやるな勢いだもの。
「イタリア、オルフェウスの諸君、ようこそライオコット島へ。さて、よくも名前を拉致してくれたなぁ」
「拉致ったのはジャンルカとマルコです!食べるならコイツらを!」
「フィディオ!元々はお前が勝手に出ていくから!」
「ジャンルカ!俺まだ食べられたくないぃ!」
「まだっていつか食べられる気だったのかよマルコ!」
「ギャースか煩いんだよ」
「ひいっ」とイタリアチームが悲鳴を上げて怯えているのを見て、どうしたらいいのか私はおどおどするしかなくて、一之瀬くんの暴走をなんとか出来るであろう土門くんが恋しくなった。
「マークくん、どうしよう…」
「圧倒されて何も出来る気がしない…」
「私もだよぉ…」
「でも」マークくんが私の背中をぐっと押した。え、ちょっと何するの!
「名前ならなんとか出来る、だって…」最後の方は聞こえなかったけど、そう言って一之瀬くんに体当たりさせられた。覚えてろよマークくん!
だってアイツは君のことで頭がいっぱいなんだぜ
「名前…」
「一之瀬くん!あの、」
何て言えばいいのか分かんない、やっぱり私は何も出来ないんだ。心配はかけるし、それが本当は迷惑かもしれないなんてずっと思ってる。
それでも皆優しくて私に笑ってくれる、そんなの嬉しくて、もっと一緒にいたいって思うだけでまた迷惑かけるのも分かっているのに、そんな私が何か出来ないかなと思っても結局何も出来ないなんて
本当私は、役立たずだ。
「そんな顔しないで名前」
一之瀬くんがギュッと正面から抱きしめてくれた。「俺が全部受け止めるよ」何も言っていないのに、彼はそう言って私の背中を撫でた。
「オルフェウス、試合が楽しみだ。ぶっ潰してやるよ」
野蛮な言葉を残して、一之瀬くんは私の手を引いてマークくんとその場を後にした。
「俺終わったかと思った…」
「ユニコーンとの試合、怖い」
「イチノセ…黒すぎる」
開会式もまだなのに、一之瀬くんがイタリアチームに恐ろしい印象を与えたことは間違いないみたい。