「わぁ」
ここはアメリカにそっくりだ。ライオコット島ってアメリカ寄りなのかな?と思ったけど出場国それぞれに合ったエリアが用意されているんだとか。
凄いね!と一之瀬くんを見上げたら「そうだね」と言ってくれた。何だか私はしゃぎ過ぎかな…。
マークくんもくすくす笑ってるし、うぅ私も少しは大人になりたいな…。
「一之瀬くん、マークくん」
「どうしたの?名前」
「本当に心配かけてごめんなさい」
「名前…」
一之瀬くんが私の名前を呼んだと同じくらいにマークくんが私を包んだ。「マ、マーク!」一之瀬くんがびっくりしている。
「カズヤばっかりだから」とマークくんは楽しそうに更にギュッと抱き締めてきて、私の顔は火が出るんじゃないかって思うくらい熱かった。
だってマークくんにこんなことされたことなかったし!
「マークくん、」
「俺も心配してた、またいなくなるんじゃないかって…」
また、なんて私には分からなかったけど、マークくんはすぐに笑ってくれたから私は少しだけ苦しかった。気を使わせているようで。
アメリカのチームユニコーンの宿舎に連れてきてもらって、監督にあいさつをした。
私はチームに関係ない人間だから、と思っていたけど、快く招き入れてくれた優しさに思わず泣いてしまった。
監督は大きくてガッチリした身体で私を抱き締めてくれたけど、その腕力は強大で、「ぐへぇ」という言葉を最後に絞め殺されるかと思った。
「少しだけでいいから手伝いを頼みたい。うちにはマネージャーがいないからな」
「私でよろしければ!フェンスの向こうに飛んで行ったホームランボールだって拾いに行きます!」
「ははは!ベイスボール!」
やれやれといった表情の一之瀬くんに私は首を傾げた。どんな雑用でもやりますって意味で言ったんだけど、監督はその後も可笑しく笑っていた。
監督のツボを掴んだようだ!
「名前ー!」
「ディランくん!あ、土門くんも!」
「やっと帰ってきたのか。名前がいなくて、一之瀬の機嫌が悪くて悪くて…俺は一之瀬のお守りばかりだったんだぞ…」
「土門くんには本当に申し訳なかったと今思いました!」
土門くんの疲れた顔が私を罪悪感で溢れさせて、そんな土門くんに一之瀬くんが「お守りってなんだよ!」って怒っていた。
「さっき監督と話してたのって、本当なのかい?名前」
「ん?」
「マネージャーになるって話!」
「そんな話してないから!」
「じゃぁ部屋はミーと同じなんてどう?」
「じゃぁの意味が分からないよ」
「ディラン」一之瀬くんの一言で何故かマークくんはビクッと肩を揺らしてディランくんの後ろに隠れてしまった。
「ディラン、今日はカズヤに譲った方が身のためだと思う。邪悪なオーラを身にまとったカズヤは…」
「マークは一体何を見たの!?」
ディランくんの質問にマークくんは手で口を押さえて、決して言うまいと逃げた結果追いかけっこが始まってしまった。なんなんだあの可愛いコンビ。
そう思っていたら、一之瀬くんがキュッと私の手を握ってきて、私は彼を見上げた。
「名前、おかえり」
「一之瀬くん…ただいま」
一之瀬くんの言葉が嬉しくて彼にギュッと抱きついた。