マネージャーなんて今までやったことがないから何をしたらいいのか分からないけど、とりあえず思い付いたことに取り組むことにした。

グランド整備してたら楽しくなって、張り切って小石拾いをしていたら土門くんがそんなことしなくていいよって言っていた。



「グランド整備は使う俺たちでやるから、名前はベンチにいていいぞ?」

「楽しいからやらせて!」

「一之瀬がダメって言うと思うけどな」

「気にすんな!」

「名前って頼もしいな」



「じゃあ俺もやるよ」土門くんも私の近くにしゃがんで小石拾いを始める。もともと綺麗なグランドだからそんなに小石もないけど、小さなことが楽しく感じる。

すると一之瀬くんがやってきてギョッと驚くような顔をしたかと思うと、私の両方の手首をグワッと掴んだ。



「名前!そんなことは土門にやらせればいいんだよ!」

「お前もやれよ一之瀬」



土門くんが的確なツッコミを入れて私に「ほらな」と言った。小石拾いも立派な仕事だと思う、そう言ったら「名前はマネージャーじゃないでしょ」なんて言われた。

それは何だか仲間外れにされているようで、そうだよね…って言うしかなかった。サッカー出来ないし。



「なんかネガティブなこと考えてない?」

「そんなことないよ…」

「俺が言いたいのはね、名前が大切だから無理しないでってことだよ」

「え…」

「分かるでしょ?」



そうだったんだ。
微笑んでくれたら、私はそれでいい、それで安心出来るから。だから信じるんだ。

皆のために私にできることをしよう!



「私買い出しに行ってくる!」

「え!1人で!?」

「行ってきます!」

「ちょっと名前!」



宿舎に戻って食堂の人と買い出しの用意をシュバババッとして、シュダッと忍者の如く宿舎を飛び出し、シュダッとアメリカエリアも飛び出してしまった。私はアホでした。

迷子です。



「あれれれ…」



最新のGPSでもここが元は無人島ということしか表示されない。使えないやつめ、とガックリしてフラフラと歩くしか道が見つからない。

ここで豪炎寺くんに会ったら今度こそバカにされちゃうな…知らない土地には無闇に飛び出さないように気を付けよう、今さら。



「名前さん!」

「あ、タイガーくん」



つい口が滑って虎丸くんのことをタイガーくんと言ってしまった。でも彼は怒らないで「あだ名ですか?」とニコニコしてくれて、頷いてみたら「嬉しいです」と返された。可愛い!

タイガーくんたちも買い出しを頼まれたらしく、ジャパンの1年生の子達で手分けしているんだとか。



「私もね!買い出しなんだよ!」

「ものすっごく嬉しそうですね?」

「うん!マネージャーっぽい?」

「あれ、マネージャーじゃなかったんですか?」



ショボーンとしたらタイガーくんに慌てて「見るからにマネージャーです!」って励まされた…情けない。

「あ、ヒロトさん」タイガーくんの言う方を向くと、かつて宇宙人と名乗っていた赤い髪の男の子がいた。うおぅ!びっくりしてタイガーくんの後ろに隠れてしまった。



「久しぶりかな?名前さん」

「えーと…グラン…さん?」

「うん、それ忘れて」



ズバッと否定され、ブンブン頷いた。タイガーくんがそれを見て笑うので隠れながら彼の背中を小突いてやった。

名前はヒロトくんと呼んでいいと言われて、話せばとてもいい人だった。今までのことは水に流すよ、もちろんもう流してたよ!本当に!



「で、名前ちゃんは何してるの?」

「あれ呼び方変わってない?ヒロトくん」



「いいでしょ?」いいけど、私はびっくりしてしまったんだよ。



「名前さんもイギリスエリアで買い出しらしいですよ?」

「え?」

「あれ、買い出しですよね?」

「イギリス?」

「ここはイギリスエリアですよ?」



アメリカからイギリスに徒歩で到着出来るなんて、何だか可笑しな話だなぁと染々思った。
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