イギリスエリアに来ているとは自分でも気づいてなかった。アメリカエリアとなんとなく雰囲気も似てる気がしてついつい…。

ひとまず食堂の人に頼まれた物は買えたし!ついでにイギリスのお菓子もちょこっと買っちゃったけど!いいよね!

お菓子をみんなで食べたらきっと楽しいだろうな…。


ちょっと荷物が重いけど、タイガーくんとヒロトくんが丁寧に教えてくれた道に沿って歩いていけばアメリカエリアにすぐ帰れるはず。

はず…。



「あれ、もう日が暮れてきた」



オレンジの夕日がキラキラと建物を照らし始めてる。お腹空いたな…。

それより、アメリカエリアはまだかな…。一之瀬くんに電話してみよう!

携帯を見たら一之瀬くんからの着歴が2件あった。



『名前!今どこにいるんだ!買い出し長くないか!?もしかしてたくさん買いすぎて帰ってこられないのか!?何買ったんだ!内容を言うんだ!』

「あの…一之瀬くん」



一之瀬くんは混乱しているのかわけもわからない事を聞くもんだから、近くにいたのか土門くんが代わりに出てくれた。



『あー名前?名前の帰りが遅いって、今一之瀬のご機嫌が斜め方向なんだ』

「土門くん…実は迷子になっちゃったみたいで」

『やっぱり…今どの辺なのか分かるか?』

「うーん…」



キョロキョロと見渡して見たけど、見覚えのあるようなないような…そんな風景しか見えなくて、土門くんになんて伝えたらいいか分かんなくなった。

どうしよう、帰れないよ…。



「名前ちゃん?」



携帯を耳につけたまま声のした方を向くと、そこには可愛らしいふわふわしたドレスを着た秋ちゃんがいた。

『どうした?』土門くんと電話してるのも忘れて、私はブチッと電源を切ってしまった。



「秋ちゃん、!うわーん!会いたかったぁ!」

「どうしたの名前ちゃん?泣かないで?」



天使のように優しい秋ちゃんに思いっきり抱きついた。いつぶりだろう!会いたかったし可愛いし!

見知らぬ土地で知り合いに会える喜びは尋常じゃないな!



「名前ちゃん、久しぶりだね。元気だった?」

「うん!秋ちゃんも元気そうだね!ドレス似合ってるよ!」

「ありが…あ!」



秋ちゃんが急に大きな声を出した。そして「円堂くん!」と近くのグランドに向かってまた大きな声を出す。

見てみればグランドがあって、そこで男の子たちがサッカーをしていた。

円堂くんに…マークくんとディランくんと、あ!フィディオくんもいる!もう1人は見覚えのない人だ。



「ごめんね名前ちゃん!私たちパーティーに呼ばれてるんだ」

「名前久しぶりだな!悪いけどまた今度話そうな!」



「またね」と秋ちゃんと円堂くんは走って行ってしまった。そっか、だから秋ちゃんドレスだったんだ。

ふむふむと納得していたら「名前ー!」とフィディオくんの声が背中に降ってきて、そしてのし掛かってきた。ぐへぇ。



「会いたかったよー!空港でイチノセに脅されてから会いに行きづらくてさぁ」

「自業自得だ」

「マークの言う通りだよ!フィディオは抜け駆けしすぎ!」

「女の子を誘うのに抜け駆けも駆け落ちもないさ!恋はいつでもハリケーンだよ!」

「お前は多少日本の某漫画に影響されてるみたいだな」



マークくんが呆れたように言うと、フィディオくんは何とも思ってないのか私に後ろから抱きついたままニコニコしていた。

「テレス!この子が名前だよ!」ディランくんがもう1人いた男の子を呼ぶ。肌が濃くで少し体の大きいその子に、はじめまして、と私が挨拶をしたら「テレスだ」と名前を教えてくれた。

聞いたことある名前だな…。



「あ!テレスくんってアルゼンチンの鉄壁のディフェンダーだよね!どんな攻撃も止めちゃうなんてすごいね!」



テレスくんはキョトンとしたけど、私の頭をポンと撫でてクールだった表情が少し和らいだ。



「試合を観にきたら、いくらでも見せてやるよ名前」



軽く手を振って帰ってしまった彼の後ろ姿を見送っていたら、後ろに抱きついたままのフィディオくんが「なんでなんで!」と喚きだした。どうしたの!

どうやらサッカーのことをあんまり知らない私が、テレスくんのことを知っていたことが納得いかないようで。だって有名だし?って言ったら

「俺だってイタリアの白い流星って呼ばれてんのにさー!」と悔しがっていた。

しかしマークくんが「うるさい」とバッサリ切り捨てた。



「そんなことより、名前は買い出しに行ってたのか?」

「うん。でもイギリスエリアまで行っちゃって…帰り道も迷子になってて…」

「俺たちがここにいて良かったよ、荷物は俺が持つから一緒に宿舎に帰ろう」



本当にマークくんはモテるんだろうなと、優しい言葉をもらった私の心がドキドキした。

私の周りにこんなに優しい人は


今まで、いたのかな



「なんでフィディオも一緒なんだ!」

「やぁイチノセ!そろそろ許してくれよ!」

「帰れイタリア人!名前に近づくなー!」



フィディオくんも何故か私たちと夕飯を食べたいそうで、一緒にアメリカ代表の宿舎に帰ってきてしまった、そしたら一之瀬くんが憤慨していた。

やれやれと土門くんが持ってる雑誌にやっぱりテレスくんが載っていた。



「土門くん!その雑誌貸してくれたおかげで、さっき選手の人とお話できたんだ!」

「おー、良かったな」



やや!違うページにフィディオくんやマークくんやディランくんに一之瀬くん、土門くんもちゃっかり載っていた!

みんな有名人だったんだ!
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