やっと時差ボケも治まってきて、ホッとしてます。もう海外に進出することを止めようかな…とか考えてしまったよ。



「一之瀬くん」

「名前、もう体調はいいの?」

「うん!ご迷惑お掛けしました!」



ペコッと頭を下げたら「迷惑なもんか」と私に笑ってくれた。その笑顔が私を安心させてくれる、涙が出そうになるのをおさえて私も笑い返す。

土門くんはディランくんに連れていかれたらしくて当分帰ってこないさ、といつものスマイルを向けながら一之瀬くんは携帯を開いた。



「今日は俺と2人きりだよ」

「そうなの?」

「マークは用事があるんだって、フィディオは入れてやらないから。ほら2人きりだろ?」

「なんか差別用語が聞こえたよ」



一之瀬くんは全く気にしてない様子で、携帯を開いたり閉じたりを繰り返している。



「ねぇ名前、何がしたい?」

「えっいきなりだね」

「せっかく2人きりなんだから、2人きりでデートでもしようか。それがいいな」

「うん、もうそれでいいよ」



一之瀬くんは嬉しそうに笑って、「さっそく出掛けよう!」と私の腕を掴んであっという間に外に出てしまった。

待って待って、私携帯電話しか持って来てないよ!
「君が気にすることじゃないさ、財布なんて男といるときは持ってる意味なんてないんだよ」と大人な発言をする一之瀬くんに、少しだけときめいてしまった。







「あ!名前はっけーん!!」



一之瀬くんと歩いていたら聞き覚えのある声。名前を呼ばれた気がして振り向いてみれば、やっぱりフィディオくんだ。



「もー、なかなか見つからないんだもん。どこ行っちゃったかと思ったよ」

「あれ、フィディオ。マークは?」

「マーク?」



フィディオくんは首を傾げたけどすぐにニコッと笑って、一之瀬くんに「もう戻ってたよ」と言った。
「土門とディランからはまだ連絡来てないし…」と一之瀬くんが携帯を開く。

あれ、土門くんもディランくんもマークくんも何か用事があるんじゃなかったっけ?

私が問いかけると、一之瀬くんとフィディオくんは顔を見合わせた。
なんだろう?何かあるのかな…。



「あのね名前」

「こらフィディオ、もう少し内緒だよ」



一之瀬くんにペシッと頭を叩かれてフィディオくんは、「分かったよイチノセ…」と私の手を握った。



「ねぇもう行っちゃおうよ!」

「え、どこに?どこに行くの?」

「おいフィディオ!」



一之瀬くんの言葉も聞かずにフィディオくんは私の手を引っ張り、向かったのはさっき出てきたアメリカで借りてる私たちの家。あれ、戻って来ちゃった?



「わ!フィディオ!」

「まだ準備出来てないよ!?」

「お前なぁ…」



玄関を開ければさっき出てきたはずの部屋が可愛く飾られている。でもところどころ飾りきれてなかったり…つまり中途半端。
土門くんもディランくんもマークくんもいて、まるで3人で飾り付けをしていたような感じ…?



「名前に会いたいとか言って飛び出したと思ったら…」

「だって黙ってられなかったんだよマーク!」



ニコニコしたフィディオくんは私の正面に立った。




「お誕生日おめでとう名前」




私にそう言ってチュッと頬に柔らかい感触がした。
何をされたか一瞬分からなかったけど、マークくんとディランくんが丸めたニュースペーパーでフィディオくんをポカポカ叩いてるのを見て我に返った。

土門くんが「拭いとかないと一之瀬に怒られそうだからな…」呆れたように私の頬にハンカチを当てて軽く擦られた。



私の誕生日のお祝いに、皆で内緒にして計画を立ててくれていたらしい。

一之瀬くんと外にいる間に買い出しに行ったり飾り付けをしたりしていたらしいんだけど、フィディオくんが抜け出して私をまだ未完成の部屋に連れてきてしまったということみたい。


せっかくだから私も一緒に飾り付けをして、皆は改めて「おめでとう」と言葉をくれた。



準備までは何ともなかったのに、何故か今になって嬉しくて、ぐすっと鼻水をすすったら皆に笑われた。

一之瀬くんは「泣き虫だな」と抱き締めてくれた。



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自分へ誕生日に^^
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