Eペリドット流星群 | 21:34
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「またこんな時間まで起きて!お肌によくないよ!」
「忙しかったの、今日」
「夜ふかしは美容の天敵なんだよ?纏肌きれいなんだからちゃんとしようよ〜」
「ええ…」

わたしの部屋で実にあざとくぷんすかと怒っているのはこれまたにんげんではない存在だった。彼はトド松。本人は妖精だと言い張っているが、本来はどちらかというと憑藻神にちかい存在である、らしい。ふわふわしたエプロンドレスみたいな服装からは想像もつかないが。

「もう寝たい…」
「髪の毛乾かしてないじゃん!」
「見せる相手なんていないもの」
「カラ松にいさんいるじゃん」
「えー…神父様はちょっとわたしの頭が跳ねててもきっときづかないよ…そもそも頭にかぶるし…」
「そうかもしれないけど…流石に濡れたまま寝たら風邪ひくってば」
「うー…」
「…しょうがないなあ、纏タオル貸して」
「うん」
「あとドライヤー」
「…うん」

のろのろ渡すと、彼はいつもかわいらしいアヒル口をやる気に満ちさせてきぱきとわたしの頭を乾かしだす。その作法にもなにかとくべつなあれそれがあるのかもしれないが、わたしにはよくわからなかった。そもそもわたしの頭は飾り気のない黒髪のセミロングでしかないので、とくになにをする必要も無いとおもうのだけれど。

「…きょうおそ松さんに会った」
「えっ嘘でしょ」
「ほんと」
「その場にちゃんと一松にいさんいた?」
「んー…なんか今日猫の集会だったらしくて、」
「はあ!?なんでそういう時に限っていないわけ!?なんかへんなことされてないよね!?」
「へんなこと…?ただしゃべっただけ」
「ほんとに?」
「うん」
「…ならいいけど…おそ松にいさん油断も隙もあったもんじゃないな…ねえ纏、あのひと悪魔だからね?わかってる?纏は聖職者だからね?」
「うん。トド松は妖精」
「よくできました」

彼がうしろからあててくるドライヤーのあたたかい風が眠気を増幅させる。船をこぎそうだ。うつらうつらしているあいだにもなにかしゃべっているようだったが、それはぜんぶ右から左に流れていった。彼はわたしにとっておともだちみたいな存在になっていた。死神の彼みたいに契約を結んだわけでもない、彼がここに住み着いているだけだ。目的は知らない。知らなくてもいいかな、とおもっている。

「…ちょっと纏、きいてる?」
「……うん」
「うそはんぶん寝てんじゃん」

かちりとドライヤーを切る音。おもたい瞼をこじ開けると彼の顔が視界にひろがっている。

「…寝ていい?」
「髪の毛終わったし、いいよ」
「うん…」

ドライヤーとかもろもろは彼に任せるとして、わたしはのそりとベッドに潜り込む。がさがさという音は彼がものをかたしている音だろう。その音がやがて止んで、「電気消すよ?」という声とともに部屋の電気が消えた。うすらと目を開けると、暗闇の中でもぼんやりと発光している彼の姿が浮かび上がるのがみえた。

「…あしたもちゃんと起こしてね」
「わかってるってば」
「……ねえ、」
「なに?」
「ありがとう」

口にすると、彼は嬉しそうなそうでもないような、つんとしたようなそうでもないような、なんだか形容し難い表情になる。

「そうだよ感謝してよね!纏が朝ちゃんと起きれるのぼくのおかげなんだから!」
「うん。…ありがとう」

おやすみなさい、とつぶやいて目を閉じると、しんとした寝室のなかで身じろぎする音がして、ひたりとわたしのおでこに触れるだれかの肌。その指先の主はわたしの顔から毛先をのけると、ちいさくささやいた。

「おやすみ、纏」



ぎりぎり…!ぎりぎり間に合った!むつごさんお誕生日おめでとうございます 個人的には魚屋の幼なじみに祝ってもらいに6人そろって行ってほしいです 2期たのしみです お祭り騒ぎですね

銅貨