それから。
続々とクラスの皆が来てくれて、歓迎会が始まった。といっても、ただ飲んだり食べたりしながら授業のこととかヒーローのこと、もうすぐ始まる期末試験のことについて話して盛り上がった。
そんななか、切島くんがこちらをむいて名前、と尋ねる。
「オメー1人でこんな広いとこ住んでんの?寂しくねぇ?」
「1人暮らしにしちゃ広いよな。親は?何してんの?」
「こら君達!あまり不躾な質問をしては彼女に失礼だろう!」
「あ、いや、大丈夫だよ。んー、父親には会った記憶あんまり無くて、でもこの間の例の動画で両親は他界ってあったから、結局分からないままだったなぁ。お母さんは、あの事件で、どっかいっちゃったというか。私はこっちにきちゃったというか、どこいるかは分からない、かな。」
「あー、わり。かなりデリカシーなかったな。ごめん!」

手を合わせて下を向く上鳴くんに全然大丈夫だよ、と伝える。まだもやっとする部分は正直あるけど、それよりも今のほうが楽しい。そんな気持ちも割とすぐ忘れるのだ。けど、ステインのことよりも私はお母さんのことのほうを余程引きずっていて。こっちのほうはまだ考えないようにすることで、ストレスから逃げている。
力なく笑ってしまったが、それを察してかお茶子が話を少しだけずらしてくれた。

「そういえば名前ちゃんの個性って、改めてどんな感じなの?」
「確かに!この何日かの訓練、別行動だったもんな」

そうなのだ。私は初日を半日サボった罰として5日間の基礎訓練のみで、皆の訓練に参加するのは週明けからとなっていた。その為皆は私の個性をあまり知らない。

「個性のコントロールって感じ、かな。条件がほんとは色々あるんだけど……」
「けど?」
「えへへ、まだ教えない」
「えぇ?!」
「だって、最初から知ってたらつまらないでしょ?」

そういうとお茶子が目をぱちくりとさせてから柔かく微笑む。

「いいねいいね!名前ちゃん、段々解れてきたかんじ!」
「ほんと?まだ硬かった?」
「確かにお茶子の言う通りかも!いーじゃん!」
「そーかな…てか、なんか恥ずかしい」

そういえば、さっきも障子君に似たようなことを言われた。私は少しずつ変わってきているのかな。だったらいいな、そう思いながら、願いながら、また、ふっと笑顔がこぼれたのがわかった。
膝の上にいた猫がその笑い声と同じくらい小さくみゃあ、と鳴いた。



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