名前にとっては待ちに待った月曜日。空も晴れ渡り澄み切っている。今日はついにみんなと訓練できる解禁日だ。朝から胸がなんとなくざわざわして止まらなかった。みんなの個性は聞いたり少しだけ見たりしていたわけだが、訓練となるとまた別というもの。そこからくる不安と期待、焦燥、羨望に心が揺れるようだった。それに今日は、初オールマイトの授業ということもあり、より一層彼女の胸を膨らませていた。
そんなテンションのまま午後を迎える。いよいよだ。
シルバーエイジのスーツを着たオールマイトはただただ輝いていた。

「さぁ、今日は戦闘訓練だ。始まる前に…名前少女、ちょっとこっち来てくれるかな」
「は、はい」
「いきなりだが君はヴィラン側だ。2人ペア10チームのヒーロー相手に連続で戦って貰う」
「はっ?!」
「名前少女はこの中で1番実戦経験が圧倒的に少ない。ヴィラン連合の襲撃や体育祭にも出てないからな」

それを経験した奴らとそうでない自分との差を感じて、焦ってくれ
オールマイトはそう名前に宣告すると20名にくじを引かせ始める。名前はというと、焦りと不安を押し殺し、やってやろうじゃないか!という気持ちになっていた。

「全員引き終わったね。最初は爆豪・麗日ペア!準備ができ次第、早速開始だ!状況設定については、以前は核として扱っていたものが人質となった想定だ」
「先生!彼女はまだ前回の状況設定についてはどのようになっているのか把握していません!」
「ありがとう飯田少年!そういえば説明を忘れていたね」

彼はそう言い、いそいそとカンニングペーパーを取り出す。大きな体に小さなカンペは持ちにくそうである。そしてそれを読み上げ、要約すると次のようになった。
@ヴィラン役は屋内に人質をとっている単独犯
A制限時間は15分
Bそれ以内に捕まえる・人質の解放がヒーローチームの勝利要件
C15分間逃げきればヴィラン役の勝ち
名前はそれを聞き、なるほどと呟く。大分ヴィラン側に有利な条件だが……
それから注意事項を受け、まずは訓練の準備が始まった。

最初は爆豪くんとお茶子。とりあえずお茶子対策で、浮くものは人質のいるフロアや近くの階から取り除いた。その際に指を針金で切ってしまう。ラッキーだ。自傷では個性は発動できないが、偶然の事故であると発動が可能なのだ。切島くんに以前切ってもらった時は、そこまで説明していなかったため、みんな知らないだろう。これを利用する。

下の階からガコ、と音が聞こえた。どこかの窓を破壊して入ってきたか。
とりあえず火急すべきはお茶子だ。浮かされたら何もできない。爆豪くんは、私にとっては相性がいい。何故なら、彼の個性は汗腺からの成分を爆発させていると聞いた。その為普段から汗をかきやすいようにしているとも。有利だ。私は自分の個性は血液でないと発動しないが、相手なら体液で発動できる。どうにか汗や涙、血を得られれば勝機はある。
考え込みながら、人質の横に立つ。
散々ヴィランっぽいと言われた個性だ。
ヴィランらしく、悪どくいこうじゃないか。



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