洸汰くんの親を殺害したマスキュラーを倒し、障子くんや常闇くん、かっちゃん、轟くんと合流したあと。突如マスクをつけた男にかっちゃんと常闇くんが個性で閉じ込められてしまった。僕らしくなく叫び、死物狂いで取り返そうとした。しかし突然現れたワープゲートに飲み込まれていくマスクの男。青山くんのレーザーが奴のマスクを弾き、常闇くんだけは取り戻すことができた。しかし、かっちゃんは。

『くんなデク』

そこからの記憶は酷くぼんやりしている。
気が付けば病院のベッドで、サイドテーブルには母からの果物とメッセージ。
守れなかった。
ぐっと拳を握るが、力が上手く入らない。悔しさに身を震わせていると、クラスの皆が病室に入ってきた。耳郎さんと葉隠さんはまだ意識が戻らず、八百万さんも僕のように目覚めたがまだベッドから離れられないという。
三人を除いて部屋にいないのは、かっちゃん。
そして、その話と同じくして、あれと意識が止まった。

「名前さんは…?」

そう尋ねると上鳴くんや芦戸さん、切島くんが唇を噛み、感情を抑えるのが分かった。それを見た瀬呂くんが切島くんの肩に手を起きながらも重たい口を開いた。

「俺らもヴィランに襲撃されて、先生達が戦ってる時に……不意をついて攫われかけた」
「な、っ?!」
「さっき障子とかと話してたけど、爆豪攫った個性の奴と、多分一緒だ」
「あの、マスクの…?」
「あぁ」

うそだ
だって、彼の口には常闇くんとかっちゃんのビー玉しかなかった。
なら、彼女はどこに
そこで再び瀬呂くんの言葉に思考が止まる

「攫われかけた、ってことは無事なの…」
「や、無事っつーか……面会謝絶。起きてもすぐに気ぃ失ったみたいに寝ちまうんだって」
「心的なものだろうと、ここの医師は言っていたそうだ。だが、もうすぐ目を覚ますだろうとも」

飯田くんが悲痛そうに呟く。さっきの僕みたいに彼の拳はふるふると小刻みに震えていた。僕にはそっか、と呟くしかなかった。
瀬呂くんの話によると、相澤先生達が交戦している際に攫われた名前さんをブラド先生が操血で間一髪取り戻したという。マスクの男は何かの通信を得ると、あっさりと名前さんを諦めた。きっとかっちゃんの居場所が分かったからそちらに向かったのだろう。意識を失った彼女を物間くんも含めた6人で守り、追撃に備えていたという。結局その時はヴィラン連合は来ず、かっちゃんだけが行方不明となった。
体力テストの時に言われたとおりだ。僕は助けられなかった。ぐっとなみだをこらえながら吐き出せば、切島くんが強い瞳で拳を握りしめた。

「今度は救けよう」

切島くんはかっちゃんを救い出したいと話し、飯田くんは引き止める。きっと彼の頭の中にはステインの時の記憶が駆け巡っているだろう。しかし、それでもかっちゃんを救出したいという切島くんの言葉や飯田くんの激昂、轟くんの賛同。話は平行線になりかけた。しかし、蛙水さんの冷静な指摘に水を打ったように僕らは静まり返る。彼女の言葉は重くのしかかってきた。けど……
タイミングが良いのか悪いのか、僕の診察が始まるということで話し合いはお開きになり、出て行く直前に切島くんは小声で夜に救出作戦を決行すると教えてくれた。今度は、救いたい。




        main   

ALICE+