二日のときは、峠から山の脊づたひにお晝頃までかかる場處へ行つて、谿間の浮島のある池へおりました。通草が口を開けて居ました。楓と鉤樟とは完全に紅と黄に染まつて居ました。山の脊は大部分丸剥げになつて居ます。池のある谿間へおりる東側の急勾配にも[#「急勾配にも」は底本では「急句配にも」]谿底にも二三尺の矮生の樹が茨のやうに枝をくねらして生ひ茂つてゐて、その中から骨のやうに白くなつて立枯れした樹が並んでゐるのです。山の脊の西側の斜面には、灰色の燒石と赤土とが交錯して、紫紺から藤色乃至紅乃至赤を柔かにぼかして、その間を黄色い芝草、緑乃至代赭乃至紫の灌木が同じやうな明るい色で點綴してゐます。あれ山の儘太古の日にむき出しに照らされてゐるのです。
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