学校に入学して、同じ教室に集まった入学生たちが、まず最初にやることは何か?
それは、
「何、前髪。よえーくせに俺とやろうっての?」
「弱いかどうか、試してみるかい……?」
「…とりあえず、呪力ぶっ放しての喧嘩じゃないことくらいは、わかるな?」
「…………」
「…………」
「返事」
「「はい」」
入学初日から脳天に鉄槌が下された五条と夏油の目尻は、うっすら光っている。
「途中で抜けるか死ぬかしない限り、これから4年間は共に過ごすことになる。親睦は深めておけ」
「はーいセンセー」
「なんだ悟」
「なんで俺より弱い奴らと親睦深めなきゃいけないんですかぁー?」
机に両脚乗せた男から放たれた言葉により、教室中に「殺気」や「苛立ち」、「呆れ」が渦巻いた。
はあ、とため息をつくと、担任・夜蛾は一言、「それはこれから自分で学べ」と生徒に伝えた。
「仕方ねーから、有象無象じゃなくて愛称で呼んでやるよ。右から、『前髪』『ホクロ』『おっぱい』な」
「最低だな」
「クズが」
「間違っても外では呼ばないでね」
休み時間、指差しでつけられた愛称に、クラスメイトは口々に不満を突きつけた。
「じゃあ特別にお前らも、俺を愛称で呼んでいいから。それでチャラな」
「わかったよ白髪〈しらが〉」
「わかったクズ」
「わかったグラサンノッポくん」
「ロクなのがねぇ」
夏油、家入、正蔵寺の3人は、初日で団結感モリモリである。そして五条は初日にしてこのボッチ感。
「お前らこのイケメンを前にしてそれかよ!」
「白髪が何か喚いてるね」
「おいコラ前髪! はくはつって言え!」
「違いがわからないな」
ガルルルとうなる五条に対し、夏油の表情はにこやかだ。
「どうでもいいけど男子、次の授業は組み手だからとっとと着替えなよ。いこ、ゆき」
「うん。じゃあ後でね、夏油くんとグラサンノッポくん」
「グラサンノッポ呼び確定?」
女子が出て行ってから、夏油は五条を振り返って言った。
「私たちも着替えようか、グラサンノッポくん」
「お前調子乗んなよ?」
組み手ではとりあえず最初は男女に分かれることとなった。体術初心者の家入に、正蔵寺が丁寧に基本を教え、慣れてきたところで二人に、今度は格闘技が特技の夏油が教えた。
それを茶化した五条に夏油が反応し、ファイッ!
再度、五条と夏油の二人に鉄槌が下されることとなった。
クラスメイトから五条への第一印象は、揃いも揃って最悪だった。