好みのタイプ

「ぜってーおっぱい一択」
「だと思ったよ」
「なんだよその目。じゃあ傑はどうなんだよ、まあどうせ尻だろうけど」
「惜しいね。腰から尻、尻から太ももだよ」
「引くわ」

年頃の男二人集まれば、「どんな子がタイプか」という下世話な話題が上がることは珍しくなく。
クラスの女子二人がシャワーを浴びている中、男子二人は自販機コーナーで盛り上がっていた。

「お前さ、硝子とゆき見てムラムラする?」
「それでムラムラしてたら任務どころじゃない」
「まあな。大体、硝子は何考えてるかよくわかんねーし、ヤニくせぇ」
「ふふ、抱かれるよりも抱く側の女だよ、硝子は」

この場に本人がいれば間違いなく何かしらの報復をされていただろう。
同級生の女子をネタにするなんてと思うが、これが思春期男子だ。

「あー、けどゆきは乳も尻も悪くねぇよな。怒ったら笑顔のままキャメルクラッチ仕掛けてくるような女だけど」
「それされてるの悟だけだよ。まあ、彼女はいい子だね。流石、守りに特化した一族出身なだけあって、潜んでいる呪霊の数や位置は特定出来るみたいだし、周りによく気がつく」

呪力を込めた攻撃を自分からは出来ないため、ゆきは任務に赴く際、誰かと組まなければならない。
センサーになること、並大抵の攻撃では彼女に傷ひとつ与えられないほどの術式《水面映し》、そしてその物腰のやわらかさから、術師たちからは「組みやすい」と好評である。
しかし、

「ただ守ってるだけだと一人になった時に不利だから、呪力が最初から込められてる《呪具》の訓練を頑張ってるみたいだ。何度か手合わせしてるけど、家でも小さい頃から仕込まれてるだけあって、なかなかセンスがいい」
「ふーん。……なあ傑」
「なんだい」
「こないだみんなでプール行った時の、ゆきの単品水着写真が硝子から写メきてる。やべぇな。待ち受けにしよ」
「詳しく聞こうか」

身内の戦闘スタイルについて評価していたのに、結局はそこに辿り着く辺り、やはり年頃男子である。

「待ち受けにするだなんて、悟はゆきに気があるのか?」
「は? いいおっぱいの写真があったら待ち受けにすんだろ」
「なるほど、最低だ」
「んーーー、まあ、俺もアイツも見合い話が絶えねぇ身だし、いい相手が来なければ俺がもらってやってもいい」
「随分と上からなんだな」

この頃には悟にとって同級生は大切な存在になっていた。
以前「ゆきがどこの誰と子供こさえようと知ったことではない」と発言したことさえあるのに、今では「ゆきを変な男の元には嫁がせたくない」という悟なりの気持ちがある。

しかし、この「俺がもらってやってもいい」という級友の言葉を聞き、傑の胸にわずかな痛みが走ったのだが、この頃の彼はそれを気に留めなかった。