交流戦・直哉

初めての交流戦でゆきちゃん先輩と組めるって聞いた時は、つい「やった!」って声出しちゃったくらい嬉しかった。
ってか、組むように話を持ってったんだけど。

最初は夏油先輩と組むはずだったゆきちゃん先輩を、「夏油先輩は自分の呪霊で索敵出来るし、ゆきちゃん先輩がセンサーとして呪霊や京都校の人たちを感知して、そこを私が叩く方が効率的」と説明して引き抜いた。

「なるほどな。攻撃さえせんやったら反射でけへんのや」

引き抜いといて、よりにもよって禪院直哉にゆきちゃん先輩を捕まえられるなんて・・・・・・!
直哉の腕から逃げようと機会をうかがってるみたいだけど、今の襲撃で呪具を壊された先輩にはなす術がない。
私がなんとかしないといけない。

「っ!」
「おっと、ちょーっと大人しくしといてくれへん? そこの鬼頭んとこの小娘と話がしたいんや」
「直哉!!」
「久しぶりやなぁ夏也乃ちゃん。なかなかええ女連れとるやん」
「汚ねぇ手でゆきちゃん先輩にそれ以上触ってんじゃねーよ!」

ああ、そのニタニタ顔が憎たらしい。

「相変わらず下品やなぁ。別嬪さんが台無しや。攻撃してもええけど、そしたら盾にしとるゆきちゃんに当たるかもなぁ。キミ、相手の呪力吸うやん? 大事な先輩に怪我させたくないやろ」
「マジでクズ・・・・・・!」

私の罵声なんて、コイツはどこ吹く風だ。

「夏也乃ちゃん。怪我しても私は自分で治療出来るから、構わず攻撃して」
「でも・・・・・・!」

直哉はどうなってもいい。どうでもいい。でもゆきちゃん先輩を傷つけるなんて嫌だ。

「へえ。随分優しいんやなぁ。乳も尻もええ大きさしとるし、別嬪さんやし、益々気に入ったわ。・・・決めた。俺の嫁さんにしよ」
「はぁ?」

冗談じゃない。こんなクズ野郎にゆきちゃん先輩が嫁ぐ? ・・・・・・冗談じゃない。
怒りで体中が煮えたぎってるみたい。爆発しそう。

「子供4〜5人孕ませたら、術式継いだもん生まれるやろ」

キレた。





「駄目! 殺したら駄目・・・・・・! 夏也乃ちゃん!」
「ッ!」

気づいたら私は後ろからゆきちゃん先輩に押さえ込まれ、左手で血まみれの男を掴んでて、自分の拳も血まみれだった。

「ゆきちゃん先輩・・・・・・無事・・・・・・?」
「私は平気。・・・・・・夏也乃ちゃん、治療するから診せてね。この人も、一応死なない程度までは治さないと」

嫌だ、と思った。

「なんでコイツも治すの」
「なんで、って・・・・・・」
「こんなのに生きてる価値ないじゃん。ほっとけばいいのに」
「それは駄目だよ」
「なんで。まさか命の価値がどうとか言いませんよね?」

呪術師ですから。
そう畳みかける私を前にしても尚、先輩の顔つきには力があった。

「殺しは駄目ってルールでしょう。このままこの人が死んだら夏也乃ちゃんが処分されてしまうから、それは嫌」
「・・・・・・! そう、でしたね」
「怪我、診るね」

良かった。コイツより私を優先してくれて。

「怒ってくれてありがとう」

そう言われた途端、迷わず私は先輩に抱きついた。
好きだなー・・・・・・。
私は、ゆきちゃん先輩のことが好きだ。大好きだ。
抱き締め返す力が心地良くて、優しくて、あったかくて、わんわん泣いた。

しばらくそうして、「応急処置しかしてないから、その人は硝ちゃんのとこに連れて行かないと」と先輩。
命は取り留めたらしい直哉の首根っこを掴んで引きずりながら、片手につながれた先輩の手のあたたかさ。
ずっとこの時が続けばいいのに。





「何があったらこんなにズタボロになるんだ」と硝子先輩に聞かれたけど、私はずっと泣きじゃくってて全然説明どころじゃなくて、ゆきちゃん先輩が代わりに説明してくれた。
そしたら一瞬間が空いて、そこにいた五条先輩と夏油先輩までゲラゲラ笑った。
夜蛾先生は唖然としてる。

「フッフフ・・・・・・! なんだそれマジウケる!!」
「よくやったね鬼頭。ブフッ」

二人して私の頭を乱暴に撫で回したもんだから、せっかくの髪がぐしゃぐしゃだ!
子供扱いしてんなよ!

聞けば最優先ターゲットである二級呪霊は、私がクソ直哉をボコしてる間に五条先輩が祓ったらしい。

ゆきちゃん先輩から離れたくなくて、まだつないだままの手に力を込めたら、「お互い汚れちゃったし、一緒にお風呂行こうか」って言ってくれた。
マジ大好き。

この日はゆきちゃん先輩からお風呂で髪を洗ってもらって、乾かしてもらったり、夜ご飯作ってくれたり、部屋に泊めてくれたり、めちゃくちゃ甘やかしてもらえた!

次はしくじりたくないから、明日は鍛錬をいつもよりハードな内容にしよう。