「ういっすういっすー」

レジ袋をガサガサさせながら部屋に入ると、隠神探偵事務所の所長の隠神がおーう、と手をひらひらさせた。

「あれ?今日はお仕事ナッシング?」
「まあなー。そんなに頻繁に問題起きないだろー」

平和が一番と言いながら新聞を眺める隠神に、まぁそんな日もありますわなと納得して定位置に座る。

「ちょいと失礼」
「換気扇確認」
「オフであります」
「空気清浄器」
「オンであります」
「よし」

家主からオッケーをもらいレジ袋からいくつかあるパックの内一つを取り出し開封して食べる。

「いつ見ても絵面がすげーわ」
「はっはっはー。食べてみる?」
「遠慮しとく」

うげぇっと口元に手を当てて顔を青くした隠神に普通ならそうだよな、とパックの中身である人肉を咀嚼しながら思う。

「ごちそうさんでした」

残りのパックはいつものように中身が分からないようにレジ袋の口元を固く結んでから冷蔵庫に入れさせてもらう。
勤務が終わったら持ち帰るつもりだし、申し訳ないけど数時間だけ我慢してもらっている。

「それが今日の報酬だったのか?」
「そうそう。これだけあれば半年はもつかな」
「そんなにもつのか」

へー、と少しだけ興味をもったのか、それともただ読み終わって暇になったのか、新聞を畳んだ隠神は頬杖をつきながら会話をする体制になった。

「そういえば飯生さんがあれって」

パッと思い出せずに「あれだよあれ」って言ってたら隠神に日本語で話せと言われる。そんな事言ってもなかなか思い出せないし、できるなら私も人間になりたい。

「あれなんだよ……そうそう、屍鬼かもしれないって話。どうにかしてっていう依頼があると」
「そうか。じゃあ明日から行くわ」
「留守は任せろ」
「何言ってんだ?お前も来るだろ?」
「なんと」

私はただの事務処理だよ?と言うも聞き入れてもらえない。

「私がご飯作らないときっと困るよ?」
「お前、料理壊滅的じゃねーか」


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