シスター・コンプレックス


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「すいません、NO.6のファイヤーウォールプログラムにエラーが発生したので修正していただけますか」

 直樹は年上の部下にプログラムファイルを添付したメールを出し、ついでに口頭で用件を伝えた。ちょうどコーヒーを飲んでいた部下は一瞬不満げな顔をしたが、あからさまな舌打ちをしたあと

「了解しました」

 といってメールを開く。年下の、しかも一度自分たちのシステムにクラッキングを仕掛けた上司に従うのはしゃくだろう。それは直樹にもわかっているので態度に関してはなにも言わない。ストレスを感じないわけではなかったが、それより大切なことがあるので正直に言えばーー興味がなかった。だがそれは、言い換えればなにものにも代え難い大切なものがあるということで、他はどのように蹂躙されてもいいがその大切な一つを侮辱されるのは彼にとってなにものにも耐え難い苦痛だ。

「シスコンのガキは家に帰って『お姉ちゃん』とでもファックしてやがれってんだ」

 だから人気のない場所で囁かれたその言葉を、彼が見逃せるはずもなかったのだ。
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