「初めまして?アローラ初のチャンピオン」

あの人と同じ夜空のような黒い髪。あの人と似ている紫の切れ長の目。

───あの人とそっくりの、顔。

「、あなた、は」
「何をそんなに驚いている?…まあいい。この地方にはUBといわれる生命体がいるそうだな」

いつもは気持ち良いはずの夜の潮風が今はやけにべたついて私の髪を揺らすけれど、そんなこと気にする余裕はない。

腰につけた6つのボールは何かを察知したようにカタカタと震えている。

「そしてそいつらを捕まえたのが国際警察でもなくアローラ初のチャンピオン」

目の前の男の人は一歩ずつゆっくりと私との距離を詰めていく。

ただ私に近付いてくるはずなのに緊張感で思わず足が下がりそうになるのをぐっと堪える。

仮にもチャンピオンなのに情けない。でも、チャンピオンだからこそわかる。

───この人は、今までバトルをした人とは違う。この人は、危ない。

「一地方の頂点に上り詰めた実力があるといえどただの子供にはUBの価値はわからないだろう?お前には手に余るほどの代物だ」
「価値とか関係ありません!あの子たちは私達の大切な仲間です!」

まるであの子たちを物扱いする言い方をする男の人につい声を荒げてしまったけれど、そんなことは気にしていないようで言葉を続ける。

「科学者としてUBには興味がある。大人しく俺に渡しさえすればお前には何もしないさ」

ただし、抵抗した場合はどうなっても知らないがな。

その言葉に冷たい水をかけられたように背筋がぞっとすると同時に、この人は本気だと嫌でもわかる。

それでも戦わなければいけない。この人にあの子たちを渡すわけにはいかない…!

腰につけた6つのボールから一番の相棒であるジュナイパーのボールを開こうとしたその時。

突如後ろからイーブイの進化系である黒いポケモン───ブラッキーが私の前に飛び出す。そして、私を庇うようにして立つその人。

「いい年してこんなガキにまで手を出すつもりか?」

私よりずっと高い背。夜空みたいな黒い髪。綺麗な桔梗色の切れ長の目。

「ミカゲさんっ!」

その後ろ姿に、胸にじわりと安心と嬉しさが広がっていく。

けれどそんな私とは反対に、ミカゲさんは眉を寄せ自分の父親であろう男の人を睨むようにして見据えていた。



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