10/黒ミサ

舞踏会デビューしてから毎日のように舞踏会へ行くマリア。


すっかり舞踏会の華やかさ、煌びやかさに取り付かれていた。



夜な夜な舞踏会に行っては学業に差し障るとシエルから注意を受けてからは皆が寝静まった後コッソリ屋敷を抜け出しては、舞踏会へ出かけていた。





そんな時事件が起こった。
大学の帰りの馬車に揺られながらウトウトするマリア。



ファントムハイヴ邸へ着くと夕食をとり、皆が寝静まるのを待つ。






「みんな寝たみたいね…」





真っ赤なドレスに着替えると、足音を立てぬよう静かに屋敷を出てゆっくりと扉を閉める。





夜の世界へ繰り出して行く…
今日はいつも居るグレルは仕事だから居ない。



エスコート役は居なくても大丈夫だろう…




城へ着くといつも通り、踊ったり、会話したり社交的に過ごす。




すると一人の男性が話しかけて来た。





「リトルレッド、面白いものがあるから見るかい?」


「えぇ、見ますわ」





男性の後をついて行くと人影のない場所へ着く。






「面白いものってな…」





突如白い布を口元に当てられると意識が遠のく。
マリアが目を覚ますと檻の中だった。



「なに…これ…」




見慣れない建物。
当たりを見渡すと仮面をつけた人達に仮面をつけた裸の女。




「いい少女が手には入った!儀式の始まりだ!」





先ほどの男がそう言うとマリアは檻から引きずり出される。




「離して!」


「その恐怖に怯える表情いいぞ」






怖い。




これは黒ミサ。



私は生け贄。




何なのかすぐ分かった。

抵抗も出来ず手足を縛られ台の上へ寝かされるマリア。



恐怖のあまりマリアは声も出せずに震える。




男は呪文を唱え始め、マリアにナイフを向けようとした。





もうだめだ。そう思った瞬間




バン!




扉が勢いよく破壊される。





そこにはセバスチャンとシエルとグレルが居た。

「大丈夫ですか?マリア様」



セバスチャンが縛られたロープをほどく。




「セバスチャン、全て始末しろ!」


「御意。グレルさん、マリア様をお願いしますね」







グレルはマリアを抱きかかえると建物の外へ出る。







「姉さ…」



「アンタ、バカじゃないノ!?アタシ達が来なかったらどうなってたの思ってんのヨ!」




シエルの言葉を遮断しグレルが声を荒らげる。





グレルは本気でマリアを怒った。



シエルは驚く。




「グレル…お前…」





マリアは無言で涙を流す。




すると建物から炎が上がる。




その中からセバスチャンが出てくる。




「坊ちゃん、全て片付けましたよ」


「ああ」


天空から誰かがストンと降りてくる。



「グレル・サトクリフ、何をしているのですか…そしてまた貴方がたの仕業でしたか」




眉間にシワを寄せる、七三分けのこの間見た死神。





「あーん、ウィル!マリア、次はバカな事するんじゃないワヨ」


「グレル・サトクリフ、回収作業へ行きますよ」




グレルとウィリアムは燃え盛る炎の方へ向かう。




「姉さん…大丈夫だったか?」




シエルに抱きつくマリア。



「シエル!怖かったよ…」




涙が止まらないマリア。






怖かった。



そしてシエルはもっと怖い思いをしたのかと思うと涙が止まらなかった。






「ここは冷えます。お屋敷に戻りましょう」




セバスチャンの声がして、マリアは涙を拭いて立ち上がろうとしたが体に力が入らずふらつく。



マリアの体をふわりとセバスチャンが抱きかかえる。





「降ろして」


「体に力が入らないようですのでこのままの方がよろしいでしょう」










ファントムハイヴ邸に戻る


入浴をし、寝る支度をして自分の部屋に居るマリア。


なんだか落ち着かない。




コンコン


シエルの部屋のドアをノックする。





「シエル…」


「姉さんどうした?」


「…」


無言でシエルのベッドへ入るとシエルに抱きしめる。




「今日は一緒に寝てもいい?」


「…いいぞ」






布団に入る二人。





「姉さん、一人で夜会に行ったりもう危ない事はしないって約束してくれ。」


「分かったわ」





指切りをするシエルとマリア。






その頃グレルは…



「マダムレッド…マリアが無事で良かったワ…」




まるでグレルが着ている赤いコートに向かって呟いて居た。