「真愛ちゃん」
「わっ、吃驚した……あ、犬飼先輩こんにちは」
「うん、こんにちは。驚いた割には普通に挨拶するんだね」
「はい?挨拶は大事ですよ?」
「真愛ちゃん、君って天然ってよく言われない?」
「どこか抜けてるね、とはよく言われます」
「うん。それ褒め言葉じゃないからね」

なんだと。
ちょっと抜けてて可愛いね、って言われたんだけど。
可愛いは褒め言葉じゃないの?

「えっと、今度から気をつけますね」
「何を?どういう風に?」
「……犬飼先輩って意地悪だって言われません?」
「まっさかぁ。女の子にそんなこと1回も言われたことないよ」

飄々として掴みどころのないこの人、犬飼澄晴はかなりモテる。
同じクラスの奈良坂くんと比べても遜色ないほど、女の子に告白されているらしい。
奈良坂くんはイケメンで物静かだからモテる。
犬飼先輩は自分のいいところが分かっていて、それを使うのが上手い。
話し上手だし、聞き上手。
犬飼先輩のことを好きじゃない子も、犬飼先輩に恋愛相談したりするらしい。
私なら犬飼先輩にはしたくないけどなぁ。
だって、何考えてるか分からないんだもん。

「でも、真愛ちゃんは苛めたくなっちゃうかも」
「は?」
「なーんて嘘だよ。俺が女の子に意地悪するわけないじゃん」
「……そうですね?」
「あ、納得してない」
「ちょっとピンとこなくて」
「マジ?」
「あ、はい」
「……あ、真愛ちゃんが食べちゃいたいくらい可愛いから意地悪してるのかも」
「私を食べても美味しくはないですね」
「あーそういう意味じゃないんだな!!」
「どういう意味ですか?」

この後、意味を聞いた私は、聞いてしまったことを後悔することになる。

「じょ、冗談ですよね……?」
「に、見える?」
「分かりません……」
「冗談だよ」

なんて言う犬飼先輩。
全然そう聞こえなかったんですけど!




お題配布元.確かに恋だった
『変態に恋されてしまいました5題』



ALICE+