時は、完全に統治された日本。
安全のために自らの情報を曝け出すようになったディストピア社会。
人はそれを真逆にとらえることもある。
ここはまるでユートピア。そう言って歩く人を見たそうな。
しかし、”世界”に監視されたこの国は牢獄のように思える。
例えるならば、そう。パノプティコン。一望監視施設。まさにそれだ。
そこで生きる、特殊な経歴を持ち類稀なる力を備えた、しかしごく普通の人間。
”世界”に愛され、憎まれた彼ら。
彼らは愛憎の末、前世の記憶を保持しカルマを背負う悲劇の子となった。
その強大な力故に多くの者に求められた。
引く手数多の彼らが取ったのは同胞の手。
導かれるは、愛憎の子らが住むエデン。
地上では体験し得ない楽園である。
何度も繰り返す生、蓄積される記憶。
彼らの記憶の始まりは遥か悠久の昔に遡ることとなるだろう。
―――――――やがて地上に赤いそれが広がる。
警鐘が鳴り響き、その鐘は同時に運命を知らせた。
廻った彼らは辿り着く。”世界”の本質に。
彼らが背負ったカルマ、それはまさに―――
これは”硝子”と呼ばれる、脆くも強く、美しい輝きを放つ愛憎の子らの物語。