悲劇は始まった

昔話を始めよう。

今から二世紀は遡る話だ。

ある小さな街に一人の無知な少年がいた。ありきたりな毎日に少年はふと、一つの疑問を思った。

何故自分は、こんな生半可な世界に立っている?何故自分は、何も知らない無知なのだ?

こんな疑問は誰しも一度は考える事であって、次第に薄れていくはずのものだった。だが、少年はその疑問を捨てきれなかった。

そして、少年は一つの答えに辿り着いた。自分が無知ならば知れば良い。こんな生半可な世界が嫌ならば、自身で新しい世界を造り上げれば良い。その答えは単純で無垢で、とても恐ろしいものだった。

少年は集めた。自身が無知だという状況を打破する為に、まずはありとあらゆる知識の詰め込まれた本や資料を。

少年は知った。ありとあらゆる知識を。そして学んだ。世界の原理など、簡単に捻曲げられる事を少年は幼いながら知ってしまった。

少年は絶望した。この世界の儚さに、この世界に生ける人間の脆さに。だから思った。

ならば自身が神となろう。

そうすれば、世界の儚さなど人間の脆さなど、そんなものが存在しない素敵で素晴らしい世界が少年を受け入れてくれる。そう思ったから。

そして少年は神に一歩近付き、悲劇は始まった。


悲劇は始まった



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