※この話は微クロスオーバー要素(tns×pkmn)が含まれます。苦手な方はご注意下さい。
偵察、という名目で今日も俺は部活を抜け出し街を歩いていた。
きっと今ごろ、南が俺がいないことに気が付いて呆れているかもしれない。「また女の子ウォッチングか」ってね。まあ、ちゃーんと偵察もするんだけど。
「さーて、今日は青学にでも行こうかな」
青学はやっかいな奴が多いし、1年ルーキーの越前くんの成長が気になる。そして何といっても青学は女子の制服が可愛い。今どき少ないセーラーに身を包んだ可愛い女の子は俺にとってとても良い目の保養になるんだ。
なーんて、ルンルン気分で青学を目指していたんだけど…。
「ラッキー!」
「ん?……え、何これ」
一瞬、自分の通り名を呼ばれて気がして振り向くと、そこにはピンクの生物がいた。まあるい体で、お腹にはカンガルーみたいなポケットがついている。中に入っているのは、赤ちゃんじゃなくて卵みたいだけど。
「ラッキー」
謎の生物はそう発した。どうやら先程俺の通り名を呼んだのはこの生物みたいだ。
「キミ、何なんだい?カンガルー…じゃあないよなあ」
「ラッキー」
「そりゃあ俺はラッキー千石なんて言われてるけどさ…」
「ラッキー」
「それだけじゃわかんないよ」
とは言っても、あっちも人間の言葉なんてわからないのかもしれない。しかし本当にこの生物は何なんだろう。こんな動物は今まで見たことがない。
「あれ、キヨくん何してるの?」
「あ、キミは!」
俺に話し掛けてきたその子は、以前に俺が声を掛けて一緒にお茶した子だった。カワイイ上に、話していてすごく楽しい子で、また遊びたいな〜なんて考えていたのに、彼女と過ごす時間が楽しすぎて、俺としたことがうっかり連絡先を聞きそびれてしまっていた子。
あの時はアンラッキーだと嘆いていたけど、まさかこんなところで再会出来るなんて。俺ってばやっぱりラッキー!
「え、なに?このピンクの…」
「それがよくわかんないんだよね、気付いたら後ろにいて」
「ラッキー!」
「…さっきから俺の通り名を呼んで、何が言いたいのさ」
彼女に再会出来たのはラッキーだけど、この生物に遭遇したのはアンラッキーだなあ。この生物が何をしたいのか、何を伝えたいのかさっぱりわからない。
「ねえ!もしかして『ラッキー』ってさ、この子の名前なんじゃない?」
「ラキ!ラキラッキー!」
彼女がそう言うと、謎の生物は嬉しそうに笑顔でこくりと頷いた。どうやらこの生物の名前はラッキーと言うらしい。じゃあ、別に俺のことを呼んだ訳ではなかったのか。
「なんだか良いことが起きそうな名前だねー」
「うん、そうだね!だって起きたよ、ラッキー!キミに再会できたことは俺にとってすんごいラッキーだよ!」
「キヨくんって本当、おだてるのがうまいね」
クスクスと彼女は笑ったけど、別におだてた訳じゃない。これは本心なんだけどなあ。
「ところでこの子、どうしよう。放っておくのも可哀想だよね」
「俺たちでこっそり飼っちゃおうか?」
「…いいね、それ」
すごく楽しそうだと言って彼女は笑った。
やっぱり、さっきのは訂正。謎の生物、いやラッキーに遭遇したことは最上級のラッキーだ!
ラッキーをこっそり2人で飼うことにした俺たちは、連絡のためにアドレスを交換した。あの時手に入れられなかった彼女のアドレスを、ついにゲットしたのだ。
そして、このラッキーが俺たち2人の恋のキューピッドになるのもそう遠くない…ハズ!
俺と同じ名前のキミ
(2013/09/09)